• 6月 2, 2025

コロナ禍後の咳止め「メジコン」は効く?長引く咳の原因と市販薬・処方薬の選び方 (2025年版)

2025年現在、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは落ち着きを見せましたが、「長引く咳」に悩まされる方は依然として少なくありません。数年前には、コロナやインフルエンザの流行により、咳止め薬、特に「メジコン」が全国的に品薄状態となり、医療現場でも確保に苦労した時期がありました。
(過去記事:「咳止め薬が足りない。」)

当時は、メーカーの供給問題なども重なり、必要な方に薬が行き渡らない状況でしたが、その後、塩野義製薬が増産体制を整えるなどの動きもあり、現在では供給状況は改善傾向にあります。しかし、「咳がなかなか治らない」「メジコンは本当に効くの?」といった疑問や不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

今回は、コロナ禍を経た現在の状況を踏まえ、長引く咳の原因と、代表的な咳止め薬である「メジコン」の効果、そして市販薬・処方薬の適切な選び方について解説します。


なぜ咳が長引くのか?考えられる原因

感染症の後に咳だけが残る「感染後咳嗽(かんせんごがいそう)」が、長引く咳の主な原因として挙げられます。コロナウイルス、インフルエンザウイルス、あるいは一般的な風邪の後でも起こりえます。

しかし、咳が長引く原因はそれだけではありません。

  • 咳喘息: 気道の過敏性が高まり、刺激に対して咳が出やすくなる状態。
  • アトピー咳嗽: アレルギー素因が関与する咳。
  • 副鼻腔気管支症候群: 副鼻腔炎(蓄膿症)に伴い、鼻水が喉に流れることで咳が出る。
  • 胃食道逆流症(GERD): 胃酸が食道に逆流することで咳が誘発される。
  • 薬剤性: 服用している薬(特に一部の降圧薬など)が原因で咳が出る。
  • その他: 肺炎、肺結核、気管支拡張症など、他の呼吸器疾患が隠れている場合もあります。

過去のブログでも触れましたが、咳がひどい場合や長引く場合は、単なる風邪のなごりと考えず、原因を特定するために医療機関での検査(必要に応じて胸部レントゲンなど)が重要になることもあります。


咳止め薬「メジコン」とは?効果はある?

「メジコン」は、医療用医薬品(処方薬)としても、一般用医薬品(市販薬)としても広く使われている咳止め薬です。主成分の「デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物」が、脳の延髄にある咳中枢に直接作用し、咳反射を抑制します。

メジコンの特徴:

  • 非麻薬性: 麻薬性の咳止め(コデインなど)に比べて、便秘や依存性のリスクが低いとされています。
  • 中枢性鎮咳薬: 咳中枢に作用して咳を止めます。痰を出しやすくする作用は主ではありません。

「メジコンは効くのか?」

メジコンは、多くの咳に対して有効性が認められています。特に、風邪や気管支炎などに伴う乾いた咳(コンコンという咳)に対して効果を発揮しやすいです。

ただし、以下のような点も理解しておく必要があります。

  • 原因によっては効きにくい: 痰が多く絡む咳や、咳喘息、胃食道逆流症などが原因の咳には、メジコン単独では効果が限定的な場合があります。
  • 対症療法: あくまで咳症状を和らげる薬であり、咳の原因そのものを治療するわけではありません。
  • 副作用: 最も注意すべき副作用は「眠気」です。服用後は自動車の運転など危険を伴う機械の操作は避ける必要があります。その他、頭痛、めまい、吐き気、便秘などが起こることもあります。(頻度は高くありませんが、重大な副作用として呼吸抑制やショック、アナフィラキシーの報告もあります。)

医師が処方する理由としては、「副作用が比較的少なく使いやすい」「長年の使用実績があり安心感がある」といった声も聞かれます。


市販薬と処方薬、どう選ぶ?

咳が出始めた時、まずは市販薬で様子を見るか、すぐに病院に行くべきか迷うことがあると思います。

【市販薬を選ぶ場合】

  • メジコン成分を含む市販薬: 「メジコンせき止め錠Pro」「メジコンせき止め液Pro」などがあります。これらは、処方薬のメジコンと同じ有効成分を含んでいます。
  • 選び方のポイント: 症状が比較的軽い、咳が出始めて間もない、熱など他の症状がない場合に適しています。
  • 注意点:
    • 用法・用量を厳守: 効かせたいからと量を増やしたり、服用間隔を詰めたりするのは絶対にやめましょう。重大な健康被害につながる可能性があります。(例: メジコンせき止め錠Pro/液Proは成人1日3回、4時間以上間隔をあける)
    • 「せき」「たん」以外の目的で使用しない: 乱用・誤用は危険です。
    • 長期連用しない: 5〜6日服用しても改善しない、または悪化する場合は使用を中止し、医療機関を受診してください。
    • 他の薬との飲み合わせ: 風邪薬、鎮静薬、抗ヒスタミン剤など、眠気が出やすい薬との併用には注意が必要です。また、特定の薬(MAO阻害薬など)との併用は禁忌、または注意が必要な場合があります。不明な点は薬剤師に相談しましょう。

【医療機関(処方薬)を選ぶ場合】

以下のような場合は、自己判断せず医療機関を受診しましょう。

  • 市販薬を数日使用しても咳が改善しない、または悪化する。
  • 咳が2週間以上続いている。
  • 呼吸が苦しい、息切れがある。
  • 発熱が続く、または高熱が出た。
  • 痰の色が黄色や緑色、あるいは血が混じる。
  • 胸の痛みがある。
  • 持病(喘息、心臓病など)がある。

処方薬の種類:

医師は、咳の原因や症状に合わせて適切な薬を選択します。

  • 鎮咳薬: メジコン(錠剤、散剤)のほか、アスベリン、フスタゾール、場合によってはリン酸コデインなどが処方されます。
  • 去痰薬: 痰が絡む咳の場合に処方されます。(例: ムコダイン、ムコソルバン)
  • 気管支拡張薬: 咳喘息などで気道が狭くなっている場合に処方されます。
  • 抗アレルギー薬: アレルギー性の咳が疑われる場合に処方されます。
  • 抗菌薬(抗生物質): 細菌感染(肺炎、気管支炎の一部など)が原因の場合に処方されます。ウイルス性の風邪には効果がありません。
  • その他: 胃酸分泌抑制薬(胃食道逆流症の場合)など。

処方されるメジコン(医療用)は、市販薬と同様の成分ですが、医師の診察に基づき、個々の症状や状態に合わせて用法・用量が決められます。


薬だけに頼らないセルフケアも大切

咳を和らげるためには、薬だけでなく日々のセルフケアも重要です。

  • 加湿: 乾燥は喉を刺激し、咳を悪化させます。加湿器を使ったり、濡れタオルを干したりして、部屋の湿度を保ちましょう。
  • 水分補給: こまめに水分を摂ることで、喉の粘膜が潤い、痰が切れやすくなります。
  • 安静: 体力を消耗すると回復が遅れます。無理せず休息をとりましょう。
  • マスクの着用: 自分の咳で周りに迷惑をかけないだけでなく、喉の乾燥を防いだり、新たな刺激から守ったりする効果も期待できます。
  • 禁煙: 喫煙は咳の大きな原因であり、悪化要因です。

コロナ禍を経て、咳に対する意識は大きく変わりました。長引く咳は、単なる感染症のなごりだけでなく、様々な原因が考えられます。

咳止め薬「メジコン」は、多くの咳に対して有効な選択肢の一つですが、万能薬ではありません。効果や副作用を正しく理解し、使用することが大切です。

軽い咳であれば市販薬で様子を見ることも可能ですが、用法・用量を守り、改善しない場合や症状が重い場合は、自己判断せずに必ず医療機関を受診しましょう。医師や薬剤師に相談し、ご自身の症状に合った適切な対処法を見つけることが、咳からの早期回復につながります。

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