- 12月 17, 2025
【院長ブログ】警告!単なる汚れではない「黄砂」の恐怖—春先・秋に急増する呼吸器・脳梗塞リスクと今すぐできる対策

神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。
朝になると車や窓ガラスがうっすらと黄色く汚れていたり、遠くの景色がかすんだりするのを目にしませんか?これは黄砂が飛来しているサインです。
黄砂(こうさ)は例年3月から5月が最もピークですが、気象条件によっては秋や冬に飛来するケースも確認されています。今年の冬は例年以上に黄砂が飛来しているというニュースを耳にします。この黄砂、単なる「砂ぼこり」として軽視してはいけません。特に呼吸器や循環器に持病をお持ちの方、ご高齢の方やお子様にとっては、重篤な健康被害を引き起こすリスクがあることが、近年の研究で明らかになっています。
当院でも黄砂の時期になると、咳、くしゃみ、鼻水、喉の痛みやイガイガ感を訴える患者様が増加します。今回は、黄砂の正体と、ご自身とご家族の健康を守るための対策についてお伝えします。
1.黄砂の正体:なぜ危険なのか?

黄砂は、ユーラシア大陸(ゴビ砂漠やタクラマカン砂漠など)の広大な乾燥地帯で巻き上げられた砂塵が、偏西風に乗って日本まで運ばれてくる現象です。
最大のリスクは、その微細さと付着物質です。
- 粒子のサイズ: 黄砂の大きさは3〜10μm(マイクロメートル)ですが、これはスギ花粉の約7分の1から10分の1程度と非常に小さいです。このため、黄砂の粒子は鼻や喉でせき止められず、ヒトの肺の奥底にある肺胞(約3μm)まで到達してしまいます。
- 汚染物質の複合: さらに危険なのは、黄砂が空中を漂う過程で、金属物質や硫酸イオン、アンモニウムイオンといった大気汚染物質(PM2.5など)を取り込んでしまうことです。粒の大きさが2.5μm以下のPM2.5は、特に気道や血管内に悪影響を及ぼすことが分かっています。

黄砂の飛来は、日本国内だけでは解決できない越境する現象であり、多方面に影響する難しい問題です。
2. 黄砂が引き起こす深刻な健康被害
黄砂と汚染物質を吸い込むことで、以下のような健康被害との関連が示唆されています。
① 呼吸器疾患の悪化(咳・喘息)

微粒子が気道や肺胞に付着することで、アレルギー反応や炎症を引き起こします。
- 症状: くしゃみ、鼻水・鼻づまり、喉の痛みやイガイガ感、目のかゆみ、頭重感などがあらわれます。特に喉の痛みは黄砂が吸気によって乾燥を引き起こし、鼻水が増えて粘膜を傷つけることで起こる典型的な症状です。
- 既存疾患: 気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患を悪化させます。
- 小児への影響: 京都大学の研究では、黄砂の多い日には小児の喘息発作や入院のリスクが普段の1.8倍に、小学生に限ると3倍を超えて多かったという報告もあります。
② 循環器疾患(脳梗塞・心筋梗塞)のリスク増大

血管内に侵入した黄砂の粒子が血管の内側の内皮を傷つける可能性があります。
九州大学の研究では、黄砂が観測されてから3日間に病院に搬送された脳梗塞患者の数が普段より7.5%増加し、重症タイプの脳梗塞患者に限ると発症リスクが1.5倍に増えたと報告されています。
③ 花粉症・アレルギー症状の複雑化

黄砂のピーク時期は、スギ花粉やヒノキ花粉の飛散時期と重なるため、アレルギー症状が混ざり合い、複雑化・悪化しやすいです。黄砂に含まれる化学物質やホコリが、アレルギー反応を誘発するケースもあります。
3. あなたと家族を守る!黄砂対策の3ステップ
黄砂を体内に入れないことが、対策の基本です。
I. 吸い込まない
外出時の防御を徹底する。マスク(N95マスクが望ましい)をしっかり着用し、顔にフィットさせる。目のかゆみが強い場合はゴーグル型メガネを装備する。黄砂が多い日は可能な限り外出を控え、屋外での活動時間を短くする。
II. 持ち込まない
帰宅時と室内の環境を整える。帰宅したら玄関に入る前に、服や帽子をはたく。手洗いとうがいで付着した黄砂を洗い流す。黄砂が多いと注意喚起されている日は窓を開けない。
III. 除去とケア
喉と室内をクリーンに保つ。濡れぞうきんやウェットシートで床を拭き掃除する(掃除のタイミングは朝が推奨)。寝室などで空気清浄機や加湿器を活用し、湿度を40~60%程度に保ち喉の乾燥を防ぐ。洗濯物は部屋干しにする(黄砂はとがった形状のため、外干しすると手で払っても取れにくい)。喉の痛みや違和感がある際は、うがい、こまめな水分摂取、トローチをなめるなどのセルフケアも有効です。
4. こんな症状は要注意!医療機関を受診する目安

黄砂による症状は風邪と見分けがつきにくく、判断が遅れると重篤な呼吸器疾患(COPDなど)につながる可能性があります。
セルフケア(うがい、マスク、市販の鼻炎用内服薬など)を行っても症状が改善しない場合や、以下の症状が見られる場合は、早めに内科にご相談ください。
- 市販薬を5~6日間服用しても症状が良くならないとき。
- 咳が2週間以上続くとき(咳喘息の可能性があります)。
- つばを飲み込めないほど喉が痛い、痛みで口を開けられないとき。
- 息苦しさがあるとき。
- 症状が黄砂の飛散量に連動して強弱が変化する場合。
この時期は特に、ご自身の体調の変化に敏感になり、「吸い込まない」対策を徹底することが大切です。お困りの際は、さいとう内科クリニックにご相談ください。当院は呼吸器疾患に対する診断・治療にも力を入れており、地域住民の皆様の健康をサポートしています。
- 院長
- 斉藤 雅也
- 診療内容
- 内科・消化器科
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- 〒651-2412
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