- 12月 17, 2025
【注意喚起】冬でも起こる「熱中症」の正体とは?「かくれ脱水」が招く脳・消化器・筋肉の危険なサイン
1. 冬の熱中症の原因は「かくれ脱水」にあり

「熱中症」といえば夏の病気というイメージがありますが、実は乾燥する冬も十分に注意が必要です。
冬は空気の乾燥によって知らず知らずのうちに体から水分が失われ、自覚のないまま脱水状態に陥る「かくれ脱水」になりやすい季節です。
この「かくれ脱水」を放置すると、暖房の効いた室内やお風呂場などで体温調節がうまくいかなくなり、「冬の熱中症」を引き起こすリスクが高まります。
体液が不足すると、脳、消化器、筋肉の3カ所で真っ先に不調が現れやすくなります。これは、これらの器官を機能させるために常に体液を循環させることが不可欠であるためです。
冬の熱中症・脱水の初期症状(脳、消化器、筋肉の不調)
初期段階では、主に以下の症状が表れます。
| 症状分類 | 症状 |
| 脳 | 頭痛、頭重感、認知機能障害として集中力の低下、日中の強い眠気、頭がボーッとする症状 |
| 消化器 | 食欲不振、胃もたれ、腹部の不快感、腹部膨満感、吐き気 |
| 筋肉 | 筋肉痛、足がつる、筋肉のけいれん・こむら返り |
これらの症状は「冬の寒さのせい」や「ちょっとした体調不良」と軽視してしまいがちですが、冬の熱中症のサインである可能性があります。
進行した時の症状
脱水症状が進行すると、体温調節機能がさらに悪化し、夏場の熱中症と同様の症状が現れます。
- けいれん・めまい・頭痛・吐き気・倦怠感
- 微熱(37℃前後):風邪ではないのに微熱が続く場合、脱水のサインの可能性があります。多くのケースでは37.4℃までに留まります。
- 尿の変化: 尿の色が濃い(黄色い)、回数が少ない。
- 喉の渇きや急激な体重減少。
2. 高齢者における脱水のリスクとチェックポイント

65歳以上の高齢者の場合、喉の渇きなどを感じにくいことから、慢性的に水分が不足しがちです。また、加齢により水分を蓄えられる筋肉量も減り、体内の水分タンクが小さくなっていることも冬の熱中症リスクを高めます。
高齢者で以下の症状に該当する場合、すでに脱水傾向にある可能性が高いです。
- 皮膚の乾燥:皮膚が乾燥し、つやがない。皮膚がポロポロ落ちる。
- 口腔内の乾燥:口の中が粘つく。つばが少なく、つばを飲み込めないことがある。
- 排便異常:便秘になった、あるいは以前よりひどくなっている。寒さでトイレを我慢して水分摂取を控えてしまうことも原因の一つです。
- 皮膚のハリの低下:手の甲をつまみ上げて離した後、跡が3秒以上残る。
- むくみ:足のすねがむくみ、靴下のゴムの跡が10分以上残る。
3. 冬の熱中症を放置する重大なリスク

脱水によって血液中の水分が減少し、血液が濃く(ドロドロに)なると、血栓ができやすくなります。
- 脳梗塞や心筋梗塞:冬場にこれらの発症が多いのは、寒さによる血管収縮に加え、脱水による血液凝固の影響も大きいと考えられています。
- 腎臓のダメージ: 脱水症状は腎不全を引き起こす恐れがあります。
- 消化器系の出血リスク: 血液サラサラの薬を内服している高齢者の場合、脱水で便が硬くなり、排便時に出血が止まらなくなるケースも見られます。
4. 予防と対策

冬の熱中症を防ぐ基本は、「喉が渇く前」のこまめな水分補給と乾燥対策です。
A水分補給の習慣
- 摂取量とタイミング: 1日1.5リットル程度を目安に、2〜3時間おきに水分をとる習慣をつけましょう。
- 意識的な摂取: 高齢者は服薬と同じように時間を決めて、意識的に水分を摂取することが重要です。
- 朝のコップ1杯: 就寝中も水分は失われます。朝起きたときにコップ1杯以上の水を飲みましょう。
- 入浴後・飲酒後: 体液が失われやすいタイミングです。必ず水分補給をしてください。
- 飲料の選択:
- 普段の水分補給には水や麦茶などで十分ですが、脱水症状が疑われる場合や多量の汗をかいた場合は経口補水液が適しています。
- 糖尿病などの持病がない場合は、スポーツドリンクも選択肢の一つです。
- 食事も大切: 朝食抜きは水分不足の原因になります。食事からも水分は摂取できるため、3食しっかり摂りましょう。
B. 環境と生活習慣の対策
- 加湿: 加湿器や濡れタオルなどで室内の湿度を保ち、体からの水分蒸発を防ぎましょう。
- 換気: 暖房使用時は定期的に窓を開けて換気を行いましょう。
- 衣服: ヒートテックなどの機能性インナーや厚着は、室内や電車内で汗をかきやすく、気付かないうちに水分を失う原因になります。暑いと感じたら脱ぎ着して調整し、水分を摂るようにしましょう。
- 排泄対策: 下腹部を腹巻きやカイロなどで温めることで、寒さによる頻尿感を和らげ、水分摂取への抵抗感を減らす工夫も有効です。
C. もし症状が出たら
意識がはっきりしている場合は経口補水液などで水分と塩分を補給し、涼しい場所で安静にしてください。脱水を心配されている方は、点滴も行っておりますので、お気軽にお声がけください。
意識がない、けいれんがある、水分が摂れないなどの場合は、速やかに医療機関を受診してください。冬だからといって油断せず、早めの対応が命を守ります。
- 院長
- 斉藤 雅也
- 診療内容
- 内科・消化器科
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