- 9月 15, 2025
放置すれば肝硬変へ。「20歳から体重+10kg」の危険サイン。今すぐ脂肪肝対策を!

「最近、お腹周りが気になってきた」
「健康診断の数値が少し…」
そう感じているあなた、20歳の頃の体重を覚えていますか?もし、その頃から10kg以上増えているなら、それは肝臓からの危険信号かもしれません。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、不調があってもなかなか自覚症状として現れません。しかし、その静けさの裏で、命に関わる病気が進行している可能性があります。
今回は、アルコールを飲まない人や痩せている人でも無関係ではない「脂肪肝」の真実と、手遅れになる前に行うべき対策について詳しく解説します。
放置すると元に戻らない。脂肪肝がたどる恐ろしい道のり

脂肪肝は、かつてはそれほど深刻な病気とは考えられていませんでした。しかし、近年の研究で、放置することがいかに危険であるかが明らかになっています。
脂肪肝の進行ルートは以下の通りです。
- 脂肪肝(MASLD): 食べ過ぎや運動不足で肝臓に中性脂肪が溜まった状態。
- 脂肪肝炎(MASH): 溜まった脂肪の毒性(脂肪毒性)により、肝細胞が壊れ、炎症や線維化(肝臓が硬くなること)が始まる状態。
- 肝硬変: 炎症が慢性化し、肝臓全体が硬く変化して正常な機能を失った状態。一度こうなると、元の健康な肝臓に戻すことはできません。
- 肝細胞がん・肝不全: 肝硬変になると、高い確率で肝細胞がんを発症したり、命に関わる肝不全に陥るリスクがあります。
恐ろしいのは、脂肪肝から脂肪肝炎の段階では、ほとんど自覚症状がないことです。しかし、脂肪肝と診断された人の約20%は、すでに脂肪肝炎に進行しているというデータもあります。
あなたは大丈夫?脂肪肝になりやすい6つの危険なタイプ

「自分は大丈夫」と思っていませんか?以下の6つのタイプに1つでも当てはまるものがあれば、注意が必要です。
タイプ1:肥満(BMI25以上)、特にお腹周りが気になる方
肥満は肝臓がんの最大のリスク因子です。特にBMIが30以上の高度肥満の方では、約8割が脂肪肝であると報告されています。
また、BMIが標準でも、腹囲が男性85cm以上、女性95cm以上の場合は要注意です。
タイプ2:糖質や脂っこいものが好きな方
痩せている方でも、ご飯やパン、麺類などの糖質や、揚げ物などの高脂肪食を摂りすぎていると脂肪肝のリスクが高まります。特に、週3回以上、就寝前2時間以内に食事をする習慣は、体脂肪が合成されやすくなるため非常に危険です。
タイプ3:週に1回以上運動する習慣がない方
食事で摂ったエネルギーを運動で消費しないと、余った分は肝臓で中性脂肪として溜め込まれていきます。まさに、動かずに食べ続けることで脂肪肝は作られてしまうのです。
タイプ4:無理なダイエットでリバウンドを繰り返している方
極端な食事制限によるダイエットは、「低栄養性脂肪肝」という特殊な脂肪肝を招きます。たんぱく質が不足すると筋肉が落ちて基礎代謝が低下し、かえって脂肪を溜め込みやすい体質になります。リバウンドで体重が2〜3kg増えただけでも、肝臓に脂肪が溜まると言われています。
タイプ5:お酒を飲むと顔が赤くなる、酔いやすい方
日本人の約半数は、アルコールの有害物質を分解する酵素(ALDH2)の働きが弱い「お酒に弱い体質」です。このような方は、アルコール性脂肪肝のリスクは低い一方で、飲酒習慣がなくても発症するメタボ脂肪肝(MASLD)のリスクが約2倍高いという研究結果があります。
タイプ6:お酒の量が多い方
純アルコール換算で1日60g以上(ビール中瓶3本、日本酒3合弱)の飲酒を5年以上続けると、9割近くが脂肪肝になります。脂肪肝になりにくい1日の適量の目安はビールならロング缶1本(500ml)、日本酒なら1合(180ml)です。肥満の方はこれより少ない量でも肝障害を起こすため、さらに注意が必要です。
まだ間に合う!希望の光は「運動」にあり

ここまで読むと不安になった方も多いかもしれません。しかし、ご安心ください。肝硬変に進行する前の脂肪肝や脂肪肝炎の段階であれば、生活習慣を改善することにより、改善が大いに期待できます。しかし、生活習慣を改善しても脂肪肝や脂肪肝炎の改善が乏しい方、そもそも生活習慣の改善が仕事柄難しい方は、生活習慣病や肝炎に対するお薬が必要な場合があります。
脂肪肝や脂肪肝炎を改善するにあたり、特に効果的なのが運動です。
運動を始めると、人間の体はまず肝臓の脂肪から優先的にエネルギーとして消費されていきます。つまり、お腹周りの皮下脂肪が落ちるより先に、肝臓はどんどん健康になっていくのです。
「NAFLD/NASH診療ガイドライン」でも、1回30〜60分程度のウォーキングなどの有酸素運動を、週3〜4回行うことが推奨されています。体重がなかなか減らなくても、内側では確実に変化が起きています。諦めずに続けることが何よりも大切です。
最も大切な「はじめの一歩」は肝臓病専門医への相談です

「20歳の頃より体重が10kg増えた」
「紹介されたタイプに当てはまるものがあった」
もしそうなら、決して楽観視せず、まずはご自身の肝臓の状態を正確に知ることが重要です。
脂肪肝は、生活習慣を見直すことで改善できる病気ですが、自己判断は禁物です。特に心臓や血管、関節などに持病がある方が急に運動を始めると、かえって体を痛めてしまうこともあります。 当院では、血液検査や腹部超音波検査による正確な診断はもちろんのこと、お一人おひとりのライフスタイルに合わせた食事や運動の指導を行っております。
また、生活習慣病や肝炎に対するお薬が必要と判断された場合には、血液検査や腹部超音波検査でしっかりとフォローさせて頂きつつ、責任をもって治療させて頂きます。健康診断で肝機能の数値を指摘された方、ご自身の肝臓の状態が気になる方は、ぜひ一度当院にご相談ください。手遅れになる前に、専門家と一緒に大切な一歩を踏み出しましょう。