- 9月 20, 2025
「足の激痛」は危険なサイン。芸人の壮絶体験から学ぶ、痛風の正しい治療と最新の食事法

ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
さいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。
健康診断で「尿酸値が高いですね」と指摘されたことはありませんか?
あるいは、ある日突然、足の親指の付け根に「ズキッ!」と激しい痛みが走り、歩くのも辛い経験をされた方はいませんか?
それは「痛風」かもしれません。30代以上の男性では100人に1人が経験するとも言われ、決して他人事ではない病気です。
今回は、お笑いコンビ「ガリットチュウ」の福島善成さんの壮絶な体験談を交えながら、痛風の本当の怖さ、そして最新の知見に基づいた正しい治療法と食事法を徹底解説します。
「今日死にますよ」医師からの警告。痛風の裏に潜む生活習慣病の連鎖

福島さんは30代の頃、過労と不摂生な生活がたたり、血圧が240まで上昇し救急搬送。その後も肝機能障害を発症し、ついに耐え難いほどの痛みを伴う「痛風発作」に見舞われます。
その痛みは「全身を竹やりで刺されているよう」「熱したアイロンを押し当てられたよう」と表現されるほど壮絶なものでした。
福島さんの身に起きたのは、「高血圧」→「肝機能障害」→「痛風」という、まさに生活習慣病の負の連鎖です。そして、この連鎖の恐ろしいところは、痛風発作だけでなく、その先にある命に関わる病気のリスクです。
尿酸値が高い状態を放置すると、糖尿病や脂質異常症を合併しやすく、動脈硬化が進行します。その結果、心筋梗塞や脳梗塞といった、より深刻な病気を引き起こす危険性が高まるのです。
痛風治療の常識。知っておきたい「2つのステップ」

痛風の治療は、ただ痛み止めを飲むだけではありません。正しいステップを踏むことが、再発を防ぎ、健康な生活を取り戻す鍵となります。
ステップ1:痛風発作が【起きている時】の治療(まずは炎症を抑える)
この時期の目標は、何よりもまず目の前の激しい痛みをコントロールすることです。
- 治療法: コルヒチンやNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、ステロイドの内服薬などで、速やかに炎症を抑えます。
- ご自身でできること: 患部を温め、無理に動かず安静にすることが大切です。
- 【最重要】注意点: この時期に、自己判断で尿酸値を下げる薬を飲み始めないでください。血中の尿酸値が急激に変動すると、逆に関節の結晶が剥がれ落ち、発作が長引いたり悪化したりすることがあります。
ステップ2:痛みが【治まった後】の治療(根本原因に取り組む)
痛みが消えても、病気が治ったわけではありません。体の中はまだ尿酸値が高いままです。将来の発作を防ぐため、ここからが本当の治療の始まりです。
- 治療法: 医師の判断のもと、尿酸の生成を抑える薬や、排泄を促す薬を毎日服用し、血中尿酸値を6.0mg/dL未満にコントロールすることを目指します。
- 薬物治療の目安: 一般的に、痛風発作を経験された方や、尿酸値が7.0mg/dL以上の方などが薬物治療の対象となります。
- 【最重要】注意点: 症状がないからといって自己判断で薬をやめてしまうと、ほぼ確実に再発します。寝不足やストレスでも尿酸値が上昇するからです。継続的な服用が何よりも大切です。
明日からできる!痛風を予防・改善する食事のポイント

薬物治療と並行して、食事療法に取り組むことが根本的な改善につながります。
【控えるべき】食品・習慣
- プリン体の多い食品: 納豆、鶏卵、明太子、ウニ、イクラ、シシャモ、数の子、白子などは、食べる頻度や量を減らしましょう。
- アルコール: プリン体の有無にかかわらず、アルコール自体が尿酸値を上げます。特にビールはプリン体も多いため注意が必要です。まずは休肝日を設けることから始めましょう。
- 果糖ブドウ糖液糖: 意外な落とし穴です。ジュースに含まれるこの甘味料は、尿酸値を上げることがわかっています。成分表示を確認する習慣をつけましょう。
【積極的に摂りたい】食品
プリン体を避けるだけでなく、尿酸の排泄を助けたり、炎症を抑えたりする食品を積極的に摂ることが最新の食事療法のポイントです。
- 乳製品(特に低脂肪乳): 適量の摂取により、尿酸の排泄を促す効果が報告されています。
- サクランボ・ベリー類: 色素成分「アントシアニン」が炎症を抑える働きをします。
- 野菜類(玉ねぎ・トマトなど): 玉ねぎの「ケルセチン」やトマトの「カリウム」などが良い影響を与えます。
- 海藻類: 尿酸値を下げる効果が期待できます。
- コーヒー: 痛風の発症リスクを下げるという研究データがあります。
- 水分補給: 1日2リットルを目安に、水やお茶で尿量を増やし、尿酸の排泄を促しましょう。
よくあるご質問(Q&A)
Q1. 薬を飲んでいれば、食事は気にしなくてもいいですか?
A1. いいえ、食事療法は必須です。薬は尿酸値をコントロールする強力な助けになりますが、根本原因である生活習慣を改善しなければ、薬をやめた途端に数値は元に戻ってしまいます。両方を組み合わせることが最も効果的です。
Q2. 痛みが消えたら、もう通院しなくていいですか?
A2. いいえ、継続的な通院が必要です。痛みがなくても高尿酸血症は続いており、放置すれば次の発作や合併症のリスクが高まります。自己判断で治療を中断してしまうことが、痛風が「再発しやすい病気」と言われる一番の原因です。
Q3. 発作が起きたら、まず何をすればいいですか?
A3. まずは患部を温めて安静にし、早めに医療機関を受診してください。食事は、プリン体を多く含む納豆や魚卵、鶏卵は避け、野菜中心の消化の良いものにしましょう。そして何より、アルコールは絶対に禁止です。寝不足やストレスも尿酸値の上昇に関わっているので、睡眠時間をしっかりキープし、趣味を持ちストレス解消できるような生活習慣を心掛けましょう。
まとめ:健康的な未来のために、今できる一歩を

福島さんは、医師からの厳しい言葉をきっかけに生活を改め、健康のために始めた柔術で国際大会に優勝するまでになりました。治療や生活改善は、我慢のためではなく、この先の人生をより豊かに、いきいきと楽しむための大切な一歩です。
「健康診断で尿酸値が高いと指摘された」
「あの足の痛み、もしかして…」
少しでも不安を感じたら、どうか一人で悩まず、お気軽に当院にご相談ください。さいとう内科クリニックは、様々な症状でお困りの皆さまの「身近なかかりつけ医」として、お一人おひとりの状態に合わせた最適な治療を行っております。皆さまと相談しつつ満足いくまでしっかりとサポートさせて頂きますので、どうぞご安心ください。