• 10月 1, 2025
  • 10月 6, 2025

【医師監修】急な腹痛や下痢・便秘…過敏性腸症候群(IBS)の原因と対処法

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
さいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

「静かな電車の中でお腹が鳴ったらどうしよう…」
「大事な会議の前に限って、急にお腹が痛くなる…」

このようなお腹の不調に、長年悩まされていませんか?
検査をしてもポリープや炎症といった異常は見つからないのに、ストレスや緊張がかかると決まってお腹の調子が悪くなる…。それは、「過敏性腸症候群(IBS)」かもしれません。

過敏性腸症候群は、日本人の10人に1人が抱えているとも言われるほど、非常にありふれた病気です。命に関わる病気ではありませんが、日常生活に大きな支障をきたし、生活の質(QOL)を著しく下げてしまいます。

今回は、過敏性腸症候群の正体と、そのつらい症状と上手に付き合っていくための方法について、お伝えいたします。


過敏性腸症候群(IBS)とは?「気のせい」ではない脳と腸の問題

過敏性腸症候群(IBS)は、大腸カメラなどで調べても目に見える異常がないにもかかわらず、腹痛や便通異常が慢性的に続く病気です。

その主な原因は、「脳腸相関」の乱れにあると考えられています。脳と腸は自律神経などを介して密接に情報をやり取りしており、脳が感じたストレスや不安が、腸の運動や感覚に直接影響を与えてしまうのです。これにより、腸が必要以上に活発に動いて下痢になったり、逆に動きが鈍くなって便秘になったり、他の人が感じないようなわずかな刺激を「痛み」として感じてしまったりします。

決して「気のせい」や「考えすぎ」ではなく、脳と腸の連携にトラブルが起きている、れっきとした「機能」の病気なのです。


あなたはどのタイプ?IBSの3つの分類

過敏性腸症候群は、主な症状によって大きく3つのタイプに分けられます。

1. 下痢型(IBS-D)

突然の激しい腹痛と共に、水のような便が日に何度も出るのが特徴です。特に若い男性に多い傾向があります。通勤・通学など、すぐにトイレに行けない状況で強い不安を感じる方が多くいらっしゃいます。

2. 便秘型(IBS-C)

お腹の張りや腹痛が続き、強くいきまないと便が出ません。出てもウサギの糞のようにコロコロとした硬い便になります。特に女性に多いタイプです。

3. 混合型(IBS-M)

下痢と便秘を数日おきに交互に繰り返します。お腹の状態が非常に不安定なタイプです。

この他に、お腹の張りやおならが主な症状となる「ガス型」に分類されることもあります。


診断と検査について

過敏性腸症候群の診断は、まず詳しい問診で症状の経過を伺い、国際的な診断基準(ローマ基準)に当てはまるかを確認します。

しかし、IBSの症状はクローン病や潰瘍性大腸炎、大腸がんといった他の深刻な病気の症状と似ている場合があります。そのため、これらの病気ではないことを確認する「除外診断」が非常に重要になります。特に、40歳以上で初めて症状が出た、体重が減少した、血便が出たといった「危険信号(アラームサイン)」がある場合は、必ず大腸内視鏡検査(大腸カメラ)などを行い、腸の中に異常がないことを確認する必要があります


つらい症状を和らげるための治療法

過敏性腸症候群の治療は、一つの特効薬があるわけではなく、生活習慣・食事・お薬を組み合わせた、総合的なアプローチが基本となります。

1.生活習慣の改善

  • ストレス管理:ご自身が何にストレスを感じるのかを把握し、上手に発散する方法を見つけることが大切です。十分な睡眠と休息を心がけましょう。
  • 適度な運動:ウォーキングなどの運動は、腸の動きを整え、ストレス解消にも繋がるため非常に効果的です。
  • 食事療法:低FODMAP(フォドマップ)食

近年、IBSの症状を改善する食事法として「低FODMAP食」が注目されています。FODMAPとは、小腸で吸収されにくく、腸内で発酵してガスや腹痛の原因となりやすい特定の糖質の総称です。

  • 高FODMAP食品(症状を悪化させやすいもの)の例:小麦、乳製品、豆類、玉ねぎ、にんにく、一部の果物(りんご、なし)など
  • 低FODMAP食品(安心して食べやすいもの)の例:米、米粉パン、鶏肉、魚、トマト、きゅうり、にんじん、バナナ、いちごなど

まずは高FODMAP食品を一定期間避け、症状が改善したら少しずつ試しながら、ご自身に合わない食品を見つけていくのが良い方法です。

2.薬物療法

症状に合わせて、お薬の力を借ります。

  • 腸の動きを整える薬:下痢型には腸の過剰な動きを抑える薬、便秘型には腸の動きを促す薬を使います。
  • 整腸剤(プロバイオティクス):腸内細菌のバランスを整え、お腹の状態を安定させます。
  • 脳に働きかける薬:痛みを強く感じすぎてしまう「内臓知覚過敏」を和らげるため、自律神経を調節する薬が非常に効果的な場合があります。

一人で悩まず、専門医にご相談ください

過敏性腸症候群は、周りの人に理解されにくい、つらい病気です。しかし、正しい知識を持ち、ご自身のタイプに合った対策を組み合わせることで、症状を大きく改善させることが可能です。

市販の下痢止めや便秘薬でその場しのぎを続けるのではなく、一度、さいとう内科クリニックにご相談ください。当院では、月に150名ほどの過敏性腸症候群の患者さまの診察をさせていただいております(2025年10月現在)。丁寧な問診と適切な検査で正確な診断を行い、あなたの生活が少しでも楽になるよう、最適な治療法を一緒に探していきます。

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