- 10月 28, 2025
【医師監修】急性膵炎と慢性膵炎の違いとは?症状・原因と膵臓がんリスクを解説

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。
「膵炎(すいえん)」と聞くと、「お酒を飲む人がなる怖い病気」というイメージをお持ちの方が多いかもしれません。確かに、膵炎は時に命に関わるほどの重症になることや、将来の膵臓がんのリスクを高める可能性があり、決して軽視できない病気です。
しかし、「膵炎」には大きく分けて2つのタイプがあり、その性質は全く異なります。
今回は、「急性膵炎」と「慢性膵炎」の違い、それぞれの原因や症状、そして最も注意すべき膵臓がんとの関係についてお伝えします。
そもそも「膵臓」とは?2つの重要な働き

膵臓は、胃の裏側にある長さ20cmほどの臓器です。あまり馴染みがないかもしれませんが、私たちの体にとって不可欠な2つの重要な働きを担っています。
| 機能 | 外分泌機能(消化を助ける) | 内分泌機能(血糖値を整える) |
| 役割 | 食べ物を分解する消化酵素を分泌する | 血糖値をコントロールするホルモンを分泌する |
| 分泌物 | ・アミラーゼ(炭水化物) ・リパーゼ(脂肪) ・トリプシン(タンパク質) | ・インスリン(血糖値を下げる) ・グルカゴン(血糖値を上げる) |
膵炎とは、この大切な臓器である膵臓に炎症が起こる病気です。そのため、膵臓の機能が損なわれると、消化不良や糖尿病といった深刻な問題につながります。
タイプ①:急性膵炎 ― 突然の激痛に襲われる緊急性の高い病気

急性膵炎は、何らかの原因で膵臓の消化酵素が膵臓内で活性化してしまい、膵臓自体を消化してしまう(自己消化)ことで、急激な炎症が起こる病気です。
主な原因
- アルコールの過剰摂取
- 胆石(特に女性では急性膵炎の原因の約4割を占めます)
- 高脂血症(中性脂肪が高い)
- 原因不明のもの(約25%)
症状と治療
主な症状は、みぞおちや上腹部の突然の激しい痛みです。しばしば背中にまで痛みが広がり、吐き気や発熱、下痢を伴います。重症化すると多臓器不全などを起こし命に関わるため、緊急の治療が必要です。
治療の基本は「膵臓の安静」。入院の上で絶飲食とし、十分な輸液(点滴)を行うことが中心となります。軽症であれば1〜2週間程度の入院で回復することが多いですが、重症の場合は1〜2ヶ月に及ぶこともあります。
タイプ②:慢性膵炎 ― 静かに進行し、膵臓を壊していく病気

慢性膵炎は、長年の炎症によって膵臓の細胞が少しずつ破壊され、元に戻らない硬い組織(線維化)に置き換わってしまう病気です。
主な原因
- 長期間にわたるアルコールの多量摂取(特に男性)
- 原因が特定できない特発性(特に女性)
進行と症状の変化
慢性膵炎は、時間をかけてゆっくりと進行し、ステージによって症状が変化します。
- 初期(代償期):主な症状は、食事や飲酒のたびに起こる慢性的な腹痛です。この段階では、膵臓の機能はまだ保たれています。
- 進行期(非代償期):膵臓の機能が失われ、腹痛はむしろ軽くなる一方、以下のような深刻な症状が現れます。
- 消化不良:消化酵素が出なくなり、下痢や脂肪便(便が白っぽく、水に浮く)、体重減少が起こる。
- 糖尿病の発症・悪化:インスリンが出なくなり、血糖コントロールが困難になる。

治療の基本は、何よりもまず「禁酒・禁煙」です。その上で、痛みの管理や、失われた機能を補うための消化酵素薬の服用、インスリン注射などを行います。
最も注意すべきこと:慢性膵炎と膵臓がんの深刻な関係

慢性膵炎について、私たちが最も強くお伝えしたいのは、膵臓がんとの密接な関連です。
長期間の炎症で傷ついた膵臓は、がんが発生しやすい土壌となってしまいます。ある報告では、慢性膵炎の患者さんは、健康な人と比べて膵臓がんを発症するリスクが16.5倍にも高まるとされています。
慢性膵炎と診断されたからといって、必ず膵臓がんになるわけではありません。しかし、非常にリスクが高い状態であることは事実であり、腫瘍マーカーを含めた定期的な血液検査や腹部エコー(超音波)検査による経過観察が極めて重要になります。
早期診断と継続的な管理を

「膵炎」と一括りにせず、「急性」と「慢性」ではその性質も治療法も、そして将来のリスクも大きく異なります。
- 急性膵炎:主たる症状は突然の腹痛です。疑わしい場合はすぐに医療機関を受診してください。
- 慢性膵炎:主たる症状は繰り返す腹痛です。禁酒・禁煙を徹底し、膵臓がんのリスクに備えて定期的な検査を継続することが不可欠です。
腹痛が続く方、健康診断で膵臓の異常を指摘された方、アルコールの量が多いなどご心配な点がある方は、ぜひ一度、さいとう内科クリニックにご相談ください。まずは、血液検査と腹部エコー(超音波)検査を行うことにより適切な診断を行い、あなたの状態に合わせた最適な治療・管理プランをご提案します。
- 院長
- 斉藤 雅也
- 診療内容
- 内科・消化器科
- 住所
- 〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3(駐車場18台あり)
(旧:森岡内科医院) - 電話
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