- 10月 29, 2025
【医師が徹底解説】お腹の脂肪、見て見ぬふりしていませんか?「内臓脂肪」の危険な正体と、腹部エコーで「見える化」する重要性

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。
毎年受けている健康診断での結果を見て、「腹囲」「BMI」「中性脂肪」「肝機能(AST, ALT, γ-GTP)」といった項目に、少し気になる数値はございませんでしたでしょうか?
「最近、お腹周りが気になってきたけれど、特に症状もないし…」と、つい後回しにしてしまいがちですが、その“ぽっこりお腹”は、体が発している危険信号かもしれません。
今回は、自覚症状がないまま進行し「サイレントキラー」とも呼ばれる「内臓脂肪」の危険な正体と、その対策について専門家の視点からお伝えします。
1.「内臓脂肪」の正体とは?“悪玉”になる脂肪のメカニズム

私たちの体につく脂肪には、大きく分けて2つの種類があります。
- 皮下脂肪: 皮膚のすぐ下につく脂肪で、手でつまむことができます。エネルギーを貯蔵したり、体温を保ったりする役割があります。女性につきやすい傾向があります(洋ナシ型肥満)。
- 内臓脂肪: 胃や腸といった内臓の周りにつく脂肪で、手でつまむことはできません。男性につきやすい傾向があります(リンゴ型肥満)。
問題となるのは、この「内臓脂肪」が過剰に蓄積した場合です。内臓脂肪は単なるエネルギーの塊ではなく、増えすぎると「アディポサイトカイン」という、体の働きを調整する様々な物質を分泌し始めます。
このアディポサイトカインには善玉と悪玉があり、内臓脂肪が増えると悪玉の分泌が活発になります。つまり、内臓脂肪は「悪玉物質を作り出す内分泌器官」へと変貌し、全身の健康に悪影響を及ぼし始めるのです。
2.なぜ危険?内臓脂肪が全身に及ぼす深刻な健康リスク

悪玉のアディポサイトカインは、以下のような様々な生活習慣病の引き金となります。「病は気から」と言いますが、現代においては「病は脂から」と言っても過言ではありません。
- 糖尿病: 血糖値を下げるホルモン「インスリン」の効きを悪くする「インスリン抵抗性」を引き起こします。
- 脂質異常症・動脈硬化: 肝臓での中性脂肪の合成を促し、悪玉(LDL)コレステロールを増加させます。これにより血管が硬く、もろくなる動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。
- 高血圧: 血管を収縮させ、血圧を上昇させる物質の分泌に関与しています。
これらの病気は、いずれも自覚症状がほとんどないまま進行するのが特徴です。
また、がんを罹患した場合でも、内臓脂肪が生命予後に影響を及ぼすことが知られるようになってきました。当院の院長は、内臓脂肪が多ければ多いほど、肝臓がん治療後の生命予後が短くなることを報告しています(Saito M, et al. J Cancer Ther, 2015 Dec 3. DOI: 10.4236/jct.2015.613122)。
3.ご自身の内臓脂肪レベルを知る方法 ―セルフチェックから精密検査まで―

では、どうすれば自分の内臓脂肪レベルを知ることができるのでしょうか。
ご自宅でできるセルフチェック
まずはご自身の体の状態を把握することから始めましょう。
腹囲(おへその高さ):男性85cm以上、女性90cm以上
BMI(体重kg ÷ (身長m)²):25以上
家庭用体組成計:「内臓脂肪レベル10.0以上」
これらのいずれかの数値に当てはまる場合は、内臓脂肪が過剰に蓄積している可能性があります。
セルフチェックはあくまで目安です。より正確にご自身の状態を把握するためには「脂肪の見える化」が重要です。
当院では、腹部エコー(超音波)検査を推奨しています。
腹部エコー検査には、以下のような大きなメリットがあります。
- 正確性: 医師が直接、超音波を使って内臓周りの脂肪の厚みや量を「見える化」し、客観的に評価できます。ご自身の目で脂肪のつき具合を確認することで、治療への意識も高まります。
- 安全性: CT検査とは異なり、放射線被ばくの心配が全くありません。体に負担をかけずに、繰り返し安全に検査を行うことができます。
- 付加価値: 内臓脂肪の蓄積と密接に関係する「脂肪肝」の程度を詳細に評価できます。脂肪肝は、放置すると肝硬変や肝がんへと進行する可能性があるため、その早期発見は非常に重要です。
漠然とした不安を抱えるよりも、まずはご自身の体を正確に「知る」ことが、健康への第一歩です。
4. 医師が教える!内臓脂肪を落とすための具体的な2大戦略

内臓脂肪は、皮下脂肪に比べて「つきやすい」反面、「反応性が高く、落としやすい」という特徴があります。つまり、生活習慣の改善が結果に結びつきやすいのです。今日から始められる具体的な戦略を2つご紹介します。
① 食事改善(何を・どう・いつ食べるか)
- 何を: 揚げ物などの脂質や、甘いもの・お酒などの糖質は控えめにしましょう。筋肉の材料となるたんぱく質(肉・魚・大豆製品)や、糖や脂肪の吸収を穏やかにする食物繊維(野菜・海藻・きのこ類)を積極的に摂りましょう。食事の最初に野菜から食べる「ベジタブルファースト」も効果的です。
- どう: 早食いは禁物です。一口30回を目安によく噛むことで、満腹中枢が刺激され、食べ過ぎを防ぎます。
- いつ: 夜遅い時間の食事は、脂肪として蓄積されやすくなります。できるだけ「就寝3時間前まで」に夕食を終えましょう。
② 運動療法(燃焼と代謝アップの組み合わせ)
- 有酸素運動(脂肪を燃やす): ウォーキングやジョギング、サイクリングなどが有効です。目標は「週に10メッツ・時」が推奨されます。これは、例えば「少し息が弾む程度の早歩き(6メッツ)を1日30分、週に3日程度」行うことで達成できます。
- 筋トレ(代謝を上げる): 筋肉は体の中で最もエネルギーを消費する器官です。筋肉量を増やすことで基礎代謝が上がり、リバウンドしにくい体質になります。特に下半身の大きな筋肉を鍛えるスクワットは非常に効率的でおすすめです。
まとめ:未来の健康のために、まずは「知る」ことから始めませんか?

内臓脂肪は、これまでの生活習慣を映し出す鏡です。しかし、見て見ぬふりをしていると、静かに、しかし着実に、あなたの健康を蝕んでいきます。
大切なのは、漠然と不安がるのではなく、まずご自身の体の状態を正確に「知る」ことです。
神戸市西区のさいとう内科クリニックでは、腹部エコー検査による正確な診断はもちろん、お一人おひとりのライフスタイルに合わせた食事や運動のアドバイスまで、医師が二人三脚でサポートいたします。
「何から始めたらいいかわからない」「一人では続けられるか不安」
そんな時は、一人で悩まず、まずはお気軽に当院までご相談ください。一緒に健康な未来への一歩を踏み出しましょう。
- 院長
- 斉藤 雅也
- 診療内容
- 内科・消化器科
- 住所
- 〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3(駐車場18台あり)
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