- 10月 30, 2025
【医師が警鐘】マンジャロでのダイエットは危険?厚労省も注意喚起する「適応外使用」の深刻なリスクとは

こんにちは、さいとう内科クリニックの院長 斉藤雅也です。
2型糖尿病の患者さんにとって希望の光である画期的な新薬が、今、美容目的の不適切な使用によって深刻な健康被害問題を引き起こしています。SNSや一部メディアで「痩せる薬」として話題の注射薬「マンジャロ」のことです。
この事態を重く見た厚生労働省は、ダイエットなどの「適応外使用」に対して「安全性・有効性は十分に検証されていない」と公式に注意喚起しており、日本医師会も同様に警鐘を鳴らしています。
今回は、なぜマンジャロのダイエット目的での使用が危険なのか、その深刻なリスクについて専門家の立場から徹底的に解説します。
まず知るべき大前提:「マンジャロ」と「ゼップバウンド」は似て非なるもの
この問題を理解する上で、まず2つの薬剤の違いを知る必要があります。これらは有効成分が同じ(チルゼパチド)であるため混同されがちですが、国が承認した目的(適応)が全く異なります。
| マンジャロ® | 日本では「2型糖尿病」の治療薬としてのみ承認されています。 | 
| ゼップバウンド® | こちらは「肥満症」の治療薬として承認されています。 | 
「では、痩せる目的ならゼップバウンドを使えばいいのでは?」と思うかもしれませんが、そう単純ではありません。ゼップバウンドが保険適用となるのは、単に痩せたいという希望ではなく、医学的に治療が必要であると医師が判断した「肥満症」の患者さんに限られます。
具体的には、「BMIが35以上」または「BMIが27以上で、高血圧など2つ以上の健康障害を持つ」といった厳しい基準を満たす必要があります。
つまり、糖尿病ではない人が美容・ダイエット目的でマンジャロを使用することは、国の承認目的から外れた「適応外使用」であり、これが全ての危険性の根源となっています。
なぜ効くのか?マンジャロの強力すぎる作用の裏側
マンジャロがこれほど注目されるのは、その画期的な作用と有効性にあります。GIPとGLP-1という2種類のホルモンに働きかけることで、既存の薬剤を上回る効果を発揮します。
実際に、有力な既存薬(オゼンピック)との直接比較試験(SURPASS-2)では、吐き気などの副作用発生率は同等でありながら、体重減少効果は約2倍であったというデータもあり、その強力さが窺えます。しかし、その強力さゆえに、専門家による厳格な管理が不可欠なのです。
適応外使用における「3つの重大なリスク」~副作用以前の問題~

適応外使用の危険性は、薬の副作用だけにとどまりません。制度的・社会的な、より深刻なリスクが存在します。
① 最も深刻なリスク:国の副作用被害救済制度の「対象外」
これが最大の危険性です。通常、承認された医薬品を正しく使用して重篤な健康被害(後遺症が残る、死亡するなど)が生じた場合、国が医療費や障害年金などを補償する制度があります。
しかし、適応外使用による健康被害は、この制度を一切利用できません。万が一の事態が起きても、すべてが自己責任となる、非常に重いリスクです。こういったリスクを十分に理解せず、安易にマンジャロによる治療を受けるのは危険です。
② 医師の管理不在が招く悲劇
本来、マンジャロのような強力な薬の処方には、事前に血液検査(腎機能、肝機能、膵臓の数値など)を行い、副作用を最小限に抑えるために低用量から慎重に投与を開始し、定期的に状態を観察します。当院では、必ず対面での診察を行い、事前検査や説明をしっかりと行った上でマンジャロを処方しております。オンライン診療などでの、このプロセスを無視した安易な処方は、あなたの体に潜むリスクを無視して、いきなり危険な薬を投与するのと同じ行為です。
③ 違法・偽造薬の闇
個人輸入やSNS経由での購入は、法律に触れる可能性があるだけでなく、極めて危険です。有効成分が全く入っていない、不衛生な環境で作られている、あるいは全く別の有害物質が混入している偽造薬のリスクが常に付きまといます。
軽視できない医学的副作用:あなたの体に何が起こるか
マンジャロは、正しく使っても以下のような副作用のリスクがあります。専門家の管理なしでは、これらのリスクへの対処は困難です。
比較的多い副作用
吐き気、嘔吐、下痢、便秘といった消化器症状が報告されています。これは、薬が胃腸の動きを緩やかにするために起こります。
重篤な副作用(これらの症状が出たら直ちに受診を!)
- 急性膵炎: 背中に響くような、我慢できない激しい腹痛。命に関わることがあります。
- 腸閉塞: 激しい腹痛や嘔吐に加え、「排便やおならが完全に出なくなる」という症状が揃ったら、緊急手術が必要になることもある危険なサインです。
- 胆嚢炎・胆石症: 右上腹部の痛み、発熱、皮膚や目が黄色くなる(黄疸)。
- その他の重要なリスク
- 薬物相互作用: 胃の動きが遅くなるため、低用量ピルや抗生物質など、吸収のタイミングが重要な他の経口薬の効果を弱めてしまう可能性があります。
- 痩せすぎのリスク: 効果が強力なため、健康を害するレベルまで体重が落ちてしまうことがあります。
- リバウンド: 薬で食欲を無理やり抑えているだけなので、中止すれば食欲は元に戻り、以前より体重が増えてしまうケースも少なくありません。
- 妊娠への影響: 胎児へのリスクが指摘されており、使用中および使用後一定期間の避妊が必要です。
 
正しい知識で、安全な選択を

痩せたい、美しくなりたいという気持ちは、誰しもが持つ自然な感情であり、決して否定されるべきものではありません。しかし、そういった欲求のためオンライン診療などで安易に処方を受けて健康を犠牲にするという選択は、絶対にしてはならないのです。
「ゼップバウンド」という正規の肥満症治療薬ですら、厳しい医学的基準と専門家による慎重な管理のもとで処方されます。この事実こそが、この種の薬剤を安易に使用することの危険性を何よりも雄弁に物語っています。危険なショートカットに手を出す前に、まずは専門家にご相談ください。
私たち、さいとう内科クリニックでは、マンジャロを希望される患者様には副作用について十分に説明し、事前検査も行い、副作用が起こりにくい生活習慣をも守っていただけるよう注意点をしっかりとご説明しています。そして、これらを理解していただいた上でマンジャロの処方を行っております。
また、マンジャロは自宅で自己注射ができる薬剤ではありますが、自己注射をするのが怖いという患者様には、毎週、院内で医師がマンジャロの注射を行っています。注射をしていくにあたり副作用が現れていないかどうかについても厳重にフォローしています。
さいとう内科クリニックは、マンジャロの使用に熟練した生活習慣病の専門家として、患者様のお話をじっくり伺い、安全で着実な道筋を一緒に探すことをお約束します。あなたの健康を守るための、正しい選択を一緒に考えていきましょう。
 
                  
                - 院長
- 斉藤 雅也
- 診療内容
- 内科・消化器科
- 住所
- 〒651-2412
 兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3(駐車場18台あり)
 (旧:森岡内科医院)
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