• 10月 31, 2025

【医師が徹底解説】むくみ・喉の渇きは危険信号?塩分の摂りすぎが招く病気と、今日からできる「攻めと守りの減塩術」

こんにちは、さいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

「日本食は健康的」というイメージがありますが、実は私たち日本人の食生活には、塩分の摂りすぎという大きな落とし穴が潜んでいます。出汁や味噌、醤油といった食文化の根幹をなす調味料には、知らず知らずのうちに多くの塩分が含まれているのです。

国の食塩摂取目標値は年々厳しくなり、現在では成人男性7.5g/日未満、女性6.5g/日未満とされています。しかし、実際の平均摂取量は男性10.9g、女性9.3gと、目標を大幅に超えているのが現状です。

今回のブログでは、この「塩分の摂りすぎ」がなぜ危険なのか、そのメカニズムから具体的な対策まで、詳しく解説していきます。


体が発するサインとメカニズム:なぜ塩分で血圧が上がるのか?

ラーメンを食べた後に喉が渇いたり、朝起きると顔がむくんでいたり。これらは体が発する塩分過剰のサインです。

私たちの血液は、常に一定の塩分濃度(約0.9%)に保たれています。塩辛いものを食べると、体は濃度を薄めるために水分を溜め込み、結果として血液全体の量が増えてしまいます。

これは、細いホースに無理やり多くの水を流し込むようなものです。血管の壁(ホース)には強い圧力がかかり、これが「高血圧」の正体です。

特に「下の血圧(拡張期血圧)」が高い状態は、心臓が拡張して休んでいる時でさえ血管に高い圧力がかかっていることを意味し、血管が休む暇もない危険な状態と言えます。


高血圧だけではない!塩分が全身に及ぼす、本当に怖い病気のリスク

塩分の摂りすぎが招くのは高血圧だけではありません。過剰な塩分は、静かに全身の健康を蝕んでいきます。

血管へのダメージ

常に高い圧力に晒された血管の内壁は傷つき、そこにコレステロールなどが付着して「動脈硬化」が進行します。これが心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気の引き金となります。

腎臓への負担

腎臓は「塩分をろ過するフィルター」です。過剰な塩分はフィルターを酷使し、機能低下(慢性腎臓病)を招きます。また、塩分(ナトリウム)が尿へ排出される際、相棒のようにカルシウムを道連れにするため、尿中のカルシウム濃度が上がり「尿路結石」もできやすくなります。

骨への影響

尿中にカルシウムが失われ続けると、体は骨を溶かしてカルシウムを補おうとします。これが、骨がもろくなる「骨粗しょう症」の一因となります。

胃へのリスク

高濃度の塩分は胃の粘膜を直接傷つけ、慢性的な炎症を引き起こします。これにより、胃がんの発生リスクを高める可能性が指摘されています。


【特にご注意を】糖尿病と塩分の、より危険な関係

糖尿病をお持ちの方は、塩分に対して特に注意が必要です。なぜなら、糖尿病の方は健常な方に比べて、同じ塩分量を摂っても血圧が上がりやすい「食塩感受性」という体質になっていることが多いからです。

高血圧と高血糖は、どちらも血管を傷つける最大の要因です。この二つが揃うと、全身の細い血管が集中する目(網膜症)、腎臓(腎症)、神経(神経障害)といった糖尿病合併症へのダメージが加速してしまいます。

特に、糖尿病性腎症と診断されている方は、高血圧の有無にかかわらず1日6g未満という、より厳格な塩分管理が強く推奨されます。

あなたの1日の塩分量は?食事内容で危険度を「見える化」

ご自身の食生活を一度シミュレーションしてみましょう。

例えば…

「朝食に食パン(0.7g)とハム(0.4g)、昼食にカップ麺(汁あり5.5g)、夕食にご飯と味噌汁(2.0g)、焼き魚に醤油(0.5g)、たくあん2枚(0.6g)」

…これだけで合計9.7g。1日の目標値を軽く超えてしまいます。


医師が教える!今日からできる「攻め」と「守り」の減塩テクニック

【守りの減塩】摂りすぎた翌日の緊急レスキュー法

外食などでつい塩分を摂りすぎてしまった時は、体からの排出を助ける工夫をしましょう。

  • カリウムを摂る: カリウムは体内のナトリウム排出を促します。ほうれん草、アボカド、バナナ、芋類などを積極的に摂りましょう。カリウムは水に溶けやすいため、「蒸す」「焼く」といった調理法がおすすめです。
  • 水分をこまめに摂る: 水を飲むことで尿量が増え、塩分が排出されやすくなります。一気飲みはせず、こまめに飲むのがポイントです。
  • 適度に汗をかく: ウォーキングや、40℃程度のぬるま湯に10分程度浸かる入浴などで、じんわりと汗をかくのも有効です。

【攻めの減塩】毎日の習慣で摂取量を減らす工夫

  • 風味を活用する: 「うま味(出汁)」「酸味(酢・レモン)」「辛味(香辛料)」「香味(ハーブ・しそ・生姜)」「油のコク(ごま油)」などを組み合わせ、塩味だけに頼らない味付けを心がけましょう。
  • 調理法を工夫する: 煮物などは、調理の最後に味付けをすると、少ない調味料でも味が染み込みやすくなります。
  • 「かける」より「つける」: 醤油やソースは、料理にかける代わりに小皿に入れてつけましょう。ただこれだけで1食あたり約0.4g、1日3食なら1.2gもの減塩に繋がります。
  • 賢く選択する: 主食はパンよりご飯(塩分0g)を基本としましょう。ハムや練り物などの加工食品は、なるべく食べる頻度を意識して減らしましょう。

減塩は「パートナー」と共に。未来の健康を守る賢い選択

長年の食習慣を変えるのは、決して簡単ではありません。しかし、減塩は「我慢」ではなく、日々の「工夫」で美味しく続けることが可能です。

当院では、高血圧や糖尿病、腎臓病などの治療はもちろんのこと、「健康診断で異常な数値を指摘されたけれど、何から始めればいいか分からない」といったお悩みにも、親身に対応いたします。

さいとう内科クリニックは、患者様の生活に寄り添い、実現可能な方法を一緒に考える「健康のパートナー」でありたいと考えています。一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。

医療法人社団好也会 さいとう内科クリニック
医療法人社団好也会 さいとう内科クリニック 外観
院長
斉藤 雅也
診療内容
内科・消化器科
住所
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3(駐車場18台あり)
(旧:森岡内科医院)
電話
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携帯
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