• 12月 17, 2025

「肺の生活習慣病」COPDの危険性、早期発見と禁煙こそが命綱

最近、「少し動くと息切れする」「風邪ではないのに咳や痰が長く続く」といった症状はありませんか? 多くの患者様はこれを「年のせい」と片付けてしまいがちですが、それは慢性閉塞性肺疾患(COPD)という、進行性の肺の病気のサインかもしれません。

COPDは、長年にわたる有害物質の吸入によって肺の機能が徐々に破壊される病気であり、早期に発見し、適切な治療を継続しなければ、日常生活に深刻な支障をきたします。


1. COPDとは何か?— 530万人が気づかない「肺の生活習慣病」

COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)は、主に肺気腫と慢性気管支炎を合わせた病気の総称です。

この病気の最大の特徴は、空気の通り道である気道や気管支が炎症によって狭くなり(閉塞)、肺の奥にある肺胞が破壊されてスカスカになることです。結果として、空気をうまく吐き出せなくなり、呼吸が困難になります。

驚くべき潜在患者数

日本では、COPDはあまり知られていない病気ですが、40歳以上の約12人に1人にあたる推定530万人以上が患者であると考えられています。しかし、実際に医療機関で診断や治療を受けているのは約38.2万人に過ぎません。多くの場合、症状がかなり進行するまで見過ごされてしまうのが現状です。


2. 最大の原因は「タバコ」と「環境汚染」

COPDの最大の原因は、タバコの煙に含まれる200種類以上の有害な化学物質の長期吸入であり、COPD患者の約90%に喫煙歴があるとされています。喫煙年数が長く、本数が多い人ほど発症リスクは高まります。

  • 受動喫煙: 自身がタバコを吸わなくても、受動喫煙もCOPDのリスク因子となります。
  • 大気汚染: タバコの煙のほかにも、PM2.5や黄砂などの大気汚染物質、粉塵、化学物質への職場での曝露(ばくろ)、乳幼児期の呼吸器感染、遺伝なども原因として挙げられます。黄砂はPM2.5などの細かい粒子を含む場合があり、これが重篤な呼吸器疾患を引き起こす可能性があります。

3. COPDの特徴的な症状チェックリスト

COPDの症状は徐々に進行するため、患者さんの多くは発症後20~30年程度の期間を経て、息切れが生活に支障をきたすレベルになってから初めて受診に至ります。

特に心当たりのある症状がないか、チェックリストで確認してみましょう。

症状チェックリスト (COPD-PSより)

□息切れ:階段や坂道を上る時、または同年代の人と同じ速さで歩くのが難しくなってきた。進行すると、着替えや洗顔などの日常動作だけでも息切れが現れます。

□せき・たん:風邪を引いていないのに、痰が絡んでせきをすることが多い。黄色や粘り気のある痰が出る。

□喘鳴:走ったり重い荷物を運んだりしたときに、呼吸がゼイゼイ・ヒューヒューと変な音がする。

□風邪の悪化:風邪を引くと長引いたり、繰り返したりする。風邪症状が強いという理由で受診したことがきっかけでCOPDが見つかることもあります。

もし1つでも当てはまる項目があり、喫煙歴がある40代以上の方は、すぐに医療機関を受診してください。


4. 診断と治療の柱

COPDでは、一度破壊されてしまった肺胞は治療しても元に戻すことができません。このため、残された肺機能を維持し、病気の進行を遅らせることが治療の鍵となります。

診断方法

  • 呼吸機能検査(スパイロメトリー): 診断にはこの検査が必須です。思い切り呼吸をした時の呼吸効率を測定し、空気が肺からうまく吐き出せない「閉塞性換気障害」がないかを確認します。機種によっては「肺年齢」として数値が出ます。
  • 画像診断: CT検査は、肺気腫の有無など肺の状態を知るのに役立ちます。

治療の原則

  • 禁煙の徹底: 喫煙を続けると呼吸機能の悪化が加速するため、禁煙が治療の基本中の基本です。
  • 薬物療法: 息切れや咳などの症状を和らげるため、気管支拡張薬(吸入薬が中心)による治療を行います。必要に応じて吸入ステロイドや、痰を出しやすくする薬(内服薬)が併用されます。
  • リハビリテーション: 息切れを軽くする呼吸法や、筋力・持久力を保つための運動療法などのリハビリを取り入れることで、生活の質の向上が期待できます。

5. 全身性のリスクと予防接種の重要性

COPDは肺だけの病気ではなく、全身の疾患です。COPDの患者さんは、肺がん(リスク約3倍)、心不全、骨粗鬆症、糖尿病、栄養障害、貧血などの全身併存症を併発しやすいことがわかっています。これらの合併症の診断と治療もあわせて行う必要があります。

感染による増悪(急な悪化)を防ぐために

COPD患者様にとって、感染症は症状を急激に悪化させる大敵です。感染による増悪を予防するために、以下の対策を徹底しましょう。

  • 予防接種: インフルエンザ、肺炎球菌、新型コロナウイルス、RSウイルスに対するワクチンを受けておく。
  • 衛生管理: 手洗いやうがいを習慣づける。
  • 栄養・体力: 呼吸にエネルギーを使うため、栄養不足による体力低下を防ぐよう、バランスの良い食事で体重を管理し、身体活動性を向上させる(不活動な状態を減らす)ことが大切です。

地域社会の取り組み

日本呼吸器学会では、COPDによる死亡率を減らすことを目指し、「木洩れ陽2032」プロジェクトを推進しています。この病気による死亡者数(2023年:16,941人)を減らすためにも、早期発見と治療の重要性を広めています。

息切れや長引く咳が続いたら、「歳のせい」と決めつけずに気軽にご相談ください。

当院では、患者様一人ひとりのCOPDの進行を防ぐための治療と生活指導に力を入れています。喫煙歴が気になる方、長引く咳でお悩みの方は、ぜひ一度、当院にご相談ください。

医療法人社団好也会 さいとう内科クリニック
医療法人社団好也会 さいとう内科クリニック 外観
院長
斉藤 雅也
診療内容
内科・消化器科
住所
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3(駐車場18台あり)
(旧:森岡内科医院)
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