• 12月 18, 2025

【院長ブログ】「疲れているだけ」と決めつけていませんか?自覚症状なき沈黙の暗殺者「糖尿病」の真の怖さと食事の鉄則

皆様、健康診断の結果で「血糖値が高め」「境界型糖尿病の疑いがある」と指摘されたことはありませんか?

糖尿病は、自覚症状がほとんどないため「まだ大丈夫」と放置されがちですが、実はその自覚症状のなさこそが、この病気が「沈黙の暗殺者(サイレントキラー)」と呼ばれる所以です。

今回は、当院でも力を入れている糖尿病予防について、有名人の壮絶な闘病経験や、実臨床の現場での見解を交えながら、今すぐ始めるべき食事と生活習慣の改善策をお伝えします。


1.症状が出た時は「進行状態」:芸人・グレート義太夫さんの事例

日本人の糖尿病の約9割が、遺伝的体質と生活習慣の乱れが原因で発症する2型糖尿病です。膵臓から分泌されるインスリンの働きが悪くなり、血液中に糖が溢れているにもかかわらず、体の細胞はエネルギー不足で「ガス欠」を起こしている状態です。

この状態が続くと、やがて症状が現れますが、その頃には病気はかなり進行しています。

お笑い芸人のグレート義太夫さんは、36歳で突然倒れた際に血糖値630mg/dLという驚異的な数値が判明しました。彼は、喉の渇きや視力低下、そして何もしていないのに体重が30kgも減少したことを、当初「疲れのせい」だと思い込んでいたそうです。

義太夫さんは、その後、高血糖が原因で人工透析(2007年開始)が必要な糖尿病性腎症を発症し、さらに昨年は心筋梗塞で倒れました。これは、高血糖が血管を静かに傷つけ、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる事態を引き起こすという、糖尿病の最も恐ろしい側面に他なりません。


2.早期発見が命運を分ける:健診の重要性        

症状が無いからといって安心できません。初期症状で糖尿病を見つけようとするのではなく、定期的な健康診断で早期発見することが何より大切です。

血糖コントロールの成績表「HbA1c」

血糖値は食事で常に変動する「その日の点数」ですが、より重要なのはHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)です。これは、過去約1ヵ月間の平均的な血糖コントロール状態を示す「通信簿」であり、この数値が6.5%以上で糖尿病と診断されます。

また、「まだ糖尿病ではない」予備軍(境界型糖尿病)の段階も、将来の健康を左右する最も重要な時期です。この段階では、インスリンの効きが悪くなったり(インスリン抵抗性)、膵臓が疲れ始めたりといった変化が水面下で確実に起こり始めています。


3.治療の土台:「食は薬」という考え方

東洋医学の「医食同源」、西洋医学の「Food is Medicine(食は薬)」という言葉がある通り、毎日の食事や生活習慣は病気の治療や予防の要です。

糖尿病治療の基本は、薬ではなく、あくまで食事療法と運動療法の「土台」です。薬はあくまで補助的なものであり、食事と運動の改善なしに薬だけで血糖値をコントロールすることはできません。

【実践】糖尿病予防のための食事の鉄則

カテゴリやるべきこと (DO)避けるべきこと (DON’T)
食べる順番野菜 → タンパク質 → 炭水化物の順(ベジタブルファースト)を徹底し、血糖値の急上昇を防ぐ。一度に食べすぎないこと。早食いを避ける(肥満や糖尿病の人は早食いの人が多い)。
炭水化物白米よりも玄米や雑穀米の方が血糖値を安定させやすい。適量をバランスよく摂る。白米、白い食パン、うどんなど精製された炭水化物を大量に摂る。極端な糖質制限は動脈硬化を進行させたり、リバウンドを招く危険がある。
野菜の選び方ホウレンソウ、キャベツ、ブロッコリーなどの葉物野菜(糖質1〜2g/100g)を積極的に摂る。サツマイモ(糖質30g/100g)、ジャガイモ(糖質15g/100g)、トウモロコシ、レンコンなどの糖質の多い根菜類やイモ類を過剰に摂る。
タンパク質魚(特に青魚)、鶏むね肉、大豆製品などの良質なタンパク質を摂り、満腹感を高める。カツや唐揚げなど、衣に含まれる糖質や油が多い調理法は避ける。蒸し物や焼き物を選ぶ。
飲み物・間食水、炭酸水、麦茶、無糖の紅茶を飲む。間食は、ナッツ類、ゆで卵、チーズなど低糖質で満足感が続くものを選ぶ。砂糖入りの炭酸飲料やスポーツドリンクを日常的に飲む(ペットボトル症候群の原因)。人工甘味料を含む「糖質ゼロ」飲料も飲み過ぎは2型糖尿病リスクを高めるという報告がある。
果物1日あたり握りこぶし程度に留め、果物そのものを食べる。フルーツジュースや野菜ジュースは食物繊維が少なく、血糖値が急激に上がるため避ける。果糖は脂肪として貯蔵されやすい。

4.最後に:健診と「かかりつけ医」の重要性

糖尿病は症状が出にくい病気だからこそ、定期的な健康診断が極めて重要です。ご家族に糖尿病の人がいる場合、体質的に糖尿病の発症リスクが高いため、若い頃からの食習慣の見直しが特に効果的です。

体調の変化を「年齢のせい」「疲れているだけ」と決めつけず、血糖値やHbA1cの数値に異変が見つかれば、早めに対策を講じることで、食事と運動だけでコントロールできる可能性も高まります。

ご自身の血糖値や生活習慣に不安がある方は、動脈硬化やがんの予防にも繋がるよう、ぜひ当院にご相談ください。私たちは、未来の健康を守るための第一歩を全力でサポートします。

医療法人社団好也会 さいとう内科クリニック
医療法人社団好也会 さいとう内科クリニック 外観
院長
斉藤 雅也
診療内容
内科・消化器科
住所
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3(駐車場18台あり)
(旧:森岡内科医院)
電話
078-967-0019
携帯
080-7097-5109
電車
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