• 12月 30, 2025

「おならが止まらない…」原因は過敏性腸症候群(IBS)のガス型?

人には言えない「お腹のガス」の悩み

こんにちは。

神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

「会議中に静かになると、お腹が鳴らないか不安で冷や汗が出る」

「人前でおならを我慢しすぎて、午後にはお腹がパンパンに張って苦しい」

「便秘じゃないのに、なぜかガスばかり出る」

こんな悩み、一人で抱えていませんか?

「たかがおなら」と笑い飛ばせるようなレベルではなく、日常生活や仕事に支障が出るほど悩んでいる場合、それは単なる体質ではなく、「過敏性腸症候群(IBS)のガス型」という病気かもしれません。

今回は、検査でも異常が見つからないのに苦しい「ガス型」の正体と、良かれと思ってやっていた「腸活」が実は逆効果かもしれない理由、そして現在発生している治療薬の供給問題と対策についてお伝えいたします。


1.なぜ?検査で異常がないのに苦しい「IBSガス型」とは

病院で内視鏡検査をしても「きれいですね」「異常ありません」と言われてしまう。でも、お腹の張りや痛み、ガスの多さは治らない。これが過敏性腸症候群(IBS)の特徴です。

IBSには「下痢型」「便秘型」などがありますが、「ガス型」は特に精神的な負担が大きいタイプです。

ガス型の特徴

・おならが頻繁に出る、または出そうで我慢する時間が長い
・お腹が張って苦しい(腹部膨満感)
・緊張すると症状が悪化する
・おならの臭いが気になる(または「漏れているのでは」と不安になる)

腸自体に炎症やポリープがあるわけではなく、「腸の知覚過敏」や「自律神経の乱れ」によって、普通のガス量でも痛みを感じたり、腸が異常な動きをしてしまったりするのが原因です。


2. 原因は「食べすぎ」だけじゃない!3つの主な要因

なぜガスが増えてしまうのでしょうか?大きく分けて3つの原因が考えられます。

無意識に空気を食べている「呑気症(どんきしょう)」

ストレスや癖で、無意識に空気を大量に飲み込んでいませんか?

  • 早食い、一気飲みをする
  • 麺類をすする、ストローをよく使う
  • 仕事中に歯を食いしばる、緊張して生唾を飲む
  • 口呼吸になっている

これらは胃や腸に大量の空気を送り込み、ゲップやおならの原因になります。

ストレスによる「腸のパニック」

脳と腸は「脳腸相関」と言われるほど密接につながっています。不安や緊張を感じると、脳からストレス信号が送られ、腸の動きが乱れてガスが溜まりやすくなります。

あなたの腸に合わない食事(FODMAPの問題)

これが最も意外な原因かもしれません。「お腹に良い」とされる食品が、IBSガス型の人には逆効果になることがあります。


2.【重要】「ヨーグルトで腸活」が逆効果!?高FODMAP食の罠

「お腹の調子が悪いから、食物繊維たっぷりのサラダとヨーグルト、納豆を食べよう!」

この行動、もしあなたがIBSガス型なら、今すぐ見直す必要があります。

特定の糖質(FODMAP:フォドマップ)は、小腸で吸収されにくく、大腸で急激に発酵して大量のガスを発生させます。健康な人には「良い発酵」でも、腸が敏感な人には「ガスの大量発生源」になってしまうのです。

注意したい「高FODMAP食品」(ガスが増えやすい)

以下の食品を食べてお腹が張るなら、一度控えてみてください。

・穀物: 小麦(パン、パスタ、ラーメン)、うどん
・豆類: 納豆、大豆製品(豆乳など)
・乳製品: 牛乳、ヨーグルト(乳糖)
野菜・果物: 玉ねぎ、ニンニク、キノコ類、リンゴ
甘味料: ハチミツ、キシリトール(ガム)

お腹に優しい「低FODMAP食品」

・穀物: 米(ご飯)、餅、十割そば
・野菜・果物: バナナ、人参、ほうれん草、ジャガイモ
・タンパク質: 肉、魚、卵(シンプルな味付けで)

3.今日からできる!ガスの悩み対策法

薬に頼る前に、まずは生活習慣でガスをコントロールしましょう。

食事は「引き算」と「ゆっくり」

まずは2〜3週間、パンやヨーグルトなどの高FODMAP食品を控え、和食中心にしてみましょう。そして、空気を飲み込まないよう、よく噛んでゆっくり食べること。これだけでガスは減ります。

我慢せず「ガス抜き」をする

家では絶対に我慢しないでください。ガスは出さないと腸内に留まり、血中に吸収されて口臭の原因にもなります。

  • ガス抜きのポーズ: 仰向けになり、両膝を抱えて胸に引き寄せるポーズが有効です。
  • 軽い運動: ウォーキングは腸の動きを正常化します。

衣服を見直す

お腹を締め付ける服装は、ガスの滞留を招き、腹痛の原因になります。ゆったりとした服装を心がけましょう。


4.【重要なお知らせ】治療薬「ポリフル」の出荷停止について

IBSの治療には、食事療法と併せてお薬を使用することがありますが、現在、主要な治療薬である「ポリフル」に関して重要なお知らせがございます。

製造販売元であるヴィアトリス製薬合同会社より、「ポリフル」が出荷停止の状態のままとなっております(2025年12月27日月現在)。

これまで当院ブログでも、限定出荷や出荷再開の見通しについてお伝えしてまいりましたが、製造プロセスの遅延等により、誠に残念ながら継続的な安定供給が困難な状況となりました。

出荷停止の対象製品

  • ポリフル錠500mg(100錠 PTP)
  • ポリフル細粒83.3%(105包 0.6g/1.2g)

※以前から供給停止となっている「ポリフル錠 1,000錠包装」「ポリフル細粒 瓶包装」も継続して停止中です。

患者様への影響と当院の対応

ポリフルは、便秘と下痢を繰り返す「混合型」や「ガス型」の方によく処方されるお薬です。同じ成分を持つ「コロネル」もすでに製造中止となっているため、現在、同一成分の代替薬は国内に存在しません。

「薬がなくなったらどうすればいいの?」と不安に思われる方も多いと思います。

当面の間は、トリメブチン(腸の動きを整える薬)や、その他の整腸剤、ガス駆除薬などを用いて症状をコントロールしていくことになります。

当院では、患者様一人ひとりの症状を改めて丁寧に診察し、腹部超音波検査なども含めて、最適な代替治療法を全力でサポートさせていただきます。

「薬が変わるのが不安」「症状が悪化しないか心配」という方も、どうぞ遠慮なくご相談ください。


まとめ:あなたは一人じゃありません

「おならが気になる」というのは恥ずかしくて相談しにくい悩みですが、実は人口の約10〜15%がIBSに悩んでいると言われています。

お薬の供給問題でご心配をおかけしますが、IBSの治療は「薬だけ」ではありません。今回ご紹介した「低FODMAP食」や「ゆっくり食べる」といった生活の工夫が、非常に大きな効果を発揮することも多々あります。

自分を責めたり、無理に我慢したりせず、まずは小さなことから始めてみませんか?

私たちは、患者様が安心して日常生活を送れるよう、最善を尽くしてまいります。

医療法人社団好也会 さいとう内科クリニック
医療法人社団好也会 さいとう内科クリニック 外観
院長
斉藤 雅也
診療内容
内科・消化器科
住所
〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3(駐車場18台あり)
(旧:森岡内科医院)
電話
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携帯
080-7097-5109
電車
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JR山陽本線「大久保駅」から神姫バス天郷停留所(約11分)下車、徒歩5分
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