• 2月 24, 2025

肝硬変の新薬情報や最新の臨床試験の動向

肝硬変は、肝臓の慢性的な損傷によって線維化が進行し、肝機能が低下する疾患です。特に、B型・C型肝炎ウイルス、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、アルコール性肝疾患が主な原因とされています。現在、肝硬変の根本的な治療法は肝移植が中心ですが、新薬開発や臨床試験が進むことで、薬物療法による治療の可能性が広がっています。今回は、肝硬変の最新の新薬情報と臨床試験の動向について詳しく解説します。


1. Rezdiffra(レズディフラ)|NASH治療薬としてFDA初承認

2024年3月14日、米国食品医薬品局(FDA)は、マドリガル・ファーマシューティカルズ社のRezdiffra(一般名:resmetirom)を迅速承認。これは、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)治療薬として初のFDA承認となる画期的な新薬。2024年4月から米国市場での販売開始予定。

Rezdiffraは甲状腺ホルモン受容体β(THR-β)作動薬であり、肝細胞の脂肪代謝を改善し、脂肪の蓄積を減少させる作用があります。臨床第3相試験(MAESTRO-NASH)では、52週間の治療後、被験者のNASHの消失率が大幅に向上し、線維化の改善も認められた。プラセボ群と比較し、肝線維化ステージF2~F3の患者の約25~30%で有意な改善が確認されました。現在、日本国内での承認申請に向けた動きも注目されています。


2. Efruxifermin(エフルキシフェルミン)|肝線維化逆転の可能性

2025年1月27日、Akero Therapeutics社は、肝硬変患者を対象としたEfruxifermin(EFX)の臨床第2b相試験で、肝線維化を逆転させる効果を確認と発表。治療群では39%の患者が肝線維化の改善を示し、プラセボ群の15%と比較して有意な改善が見られた。96週間の試験データにより、持続的な肝機能改善が期待できる結果が得られた。

EfruxiferminはFGF21アナログ(線維芽細胞成長因子21)であり、脂肪代謝を促進し、抗炎症作用を発揮することで肝硬変の進行を抑制する。同様の作用を持つ他の薬剤と比べ、より強力な線維化改善効果が示された。現在、臨床第3相試験の準備が進められており、成功すれば肝硬変治療の新たな選択肢となる可能性が高い。


3. Semaglutide(セマグルチド)|MASH患者の肝線維化改善

Novo Nordisk社の糖尿病治療薬「Semaglutide(GLP-1受容体作動薬)」が、MASH(代謝性機能障害関連脂肪性肝炎)患者の肝線維化改善に効果を示した。2024年11月に発表された臨床試験データでは、72週間の投与で37%の患者に肝線維化の改善が認められた。

Semaglutideは、体重減少やインスリン感受性改善に効果を持つ薬剤で、糖尿病や肥満症治療に使用されている。MASH患者では、肝脂肪の減少が線維化改善につながる可能性が高く、肝線維化の進行を遅らせる新たな治療選択肢として期待されている。


4. 日本におけるNASH・肝硬変治療薬の開発状況

日本国内では、NASHおよび肝硬変治療薬の開発が進行中。海外企業と国内製薬企業が共同で臨床試験を実施し、日本市場への適応を目指している。

日本のNASH患者数は約200万~300万人と推定され、治療法の確立が急務。国内大手製薬会社が新薬開発に参画し、海外企業と共同で臨床試験を推進。2024年以降、日本での治験データを基に厚生労働省への承認申請が期待されている。


今後の展望

肝硬変治療は、従来の対症療法から根本的な治療薬の開発へと大きく進化しています。再生医療、抗線維化薬、ホルモン療法、GLP-1受容体作動薬など、多様なアプローチが期待されています。今後も最新の研究や臨床試験の進展を注視し、最適な治療選択肢を検討することが重要です。

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