• 6月 2, 2025

【2025年最新情報】百日咳、流行しています。大人も見逃し厳禁! 家族みんなで知るべき予防と対策

こんにちは。神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

「最近、なんだか咳が長引いている…」
「風邪だと思っていたけど、夜になると咳がひどくなる…」

そんな症状にお困りではありませんか?もしかすると、それは単なる風邪ではなく「百日咳」かもしれません。

2025年に入り、近隣の大阪府では百日咳の報告数が過去数年間で最も高い水準で推移しており、特に2024年後半から顕著な増加傾向が続いています(2025年第10週時点)。神戸市にお住まいの皆様も、決して他人事ではありません。

百日咳は、かつて子供の病気というイメージがありましたが、近年はワクチンの効果が薄れてきた大人にも感染が広がっており、大人が感染源となって家庭内や周囲、特に抵抗力の弱い赤ちゃんにうつしてしまうケースが問題視されています。

今回は、この百日咳について、最新情報を交えながら、その特徴、大人と子供の症状の違い、そして何よりも大切な予防と対策について詳しく解説します。ご家族みんなの健康を守るために、ぜひ最後までお読みください。


百日咳とは?意外と知らない基本情報

▲※イメージ画像です

百日咳は、「百日咳菌(Bordetella pertussis)」という細菌に感染することで起こる急性の気道感染症です。

  • 感染経路: 主に、感染した人の咳やくしゃみに含まれる菌を吸い込むことによる「飛沫感染」や、菌が付着した手で口や鼻に触れることによる「接触感染」で広がります。感染力は非常に強いと言われています。
  • 潜伏期間: 通常、感染してから5~10日程度で症状が出始めます。
  • 症状の経過: 百日咳の症状は、大きく3つの時期に分けられます。
    1. カタル期(約1~2週間): 鼻水、くしゃみ、微熱など、普通の風邪とよく似た症状から始まります。しかし、徐々に咳の回数が増え、咳の程度も激しくなっていきます。
    2. 痙咳期(けいがいき)(約2~4週間): この時期に百日咳特有の激しい咳発作(痙咳発作)が現れます。短い咳が連続的に「コンコンコンコンッ」と続き、その後、息を吸い込むときに「ヒューッ」という笛のような音が出るのが特徴です。咳き込みのあまり嘔吐したり、顔が真っ赤になったりすることもあります。夜間に症状が悪化しやすい傾向があります。
    3. 回復期(数週間~数ヶ月): 激しい咳発作は徐々に治まりますが、咳自体はしばらく続くことがあります。全快するまでには2~3ヶ月かかることもあります。

なぜ今、大人の百日咳に注意が必要なの?

「子供の頃に予防接種を受けたから大丈夫」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、注意が必要です。

  • 大人の症状は非典型的: 大人が百日咳にかかっても、乳幼児期のような特徴的な「ヒューッ」という音を伴う咳発作が見られないことが多く、長引く咳やしつこい咳、程度の軽い気管支炎のような症状で経過することが少なくありません。そのため、単なる風邪や気管支炎だと思い込み、診断や治療が遅れてしまうことがあります。
  • 感染源となるリスク: 大人は症状が軽くても、百日咳菌を排出しているため、気づかないうちに家庭内や職場で感染を広げてしまう可能性があります。特に、ワクチン未接種の赤ちゃんや免疫力の低いお年寄りにうつしてしまうと、重症化させてしまう危険性があります。
  • ワクチンの効果減衰: 乳幼児期に受けた百日咳ワクチンの効果は、残念ながら永久に続くわけではありません。一般的に、接種後5~10年程度で免疫効果が徐々に低下してくると言われています。そのため、最後にワクチンを接種してから時間が経過している大人は、感染するリスクが高まります。

実際に、2018年に百日咳が全数把握疾患となって以降、成人の報告数も明らかになってきており、その中にはワクチン接種歴のある方も含まれています。


赤ちゃんや小さな子供は特に危険!見逃せないサイン

百日咳は、特に乳幼児、とりわけ生後6ヶ月未満の赤ちゃんにとっては命に関わることもある非常に危険な感染症です。

  • 重症化のリスク: 乳幼児は気道が狭いため、激しい咳発作によって呼吸困難に陥りやすく、無呼吸発作、肺炎、脳症などの重い合併症を引き起こすことがあります。時には入院治療が必要となったり、残念ながら命を落としてしまうケースも報告されています。
  • 非典型的な症状に注意: 赤ちゃんの場合、百日咳特有の咳発作が見られず、単に息を止めているような無呼吸発作や、顔色が悪くなる(チアノーゼ)、けいれんといった症状で始まることもあります。普段と様子が違うと感じたら、すぐに医療機関を受診しましょう。

もしかして百日咳?気になる症状セルフチェック

以下のような症状が続く場合は、百日咳の可能性があります。

□ 2週間以上、咳が続いている。

□ 最初は風邪のようだったが、だんだん咳の回数が増え、激しくなってきた。

□ 夜間や明け方に特に咳がひどくなる。

□ 短い咳が連続して出て、息を吸い込むときに「ヒュー」という音がする(特に子供の場合)。

□ 咳き込んで嘔吐してしまうことがある。

□ 咳で顔が真っ赤になったり、目が充血したりする。

□ 周囲にも同じように長引く咳をしている人がいる。

□ 百日咳の予防接種を受けていない、または最後に受けてから10年以上経過している。

□ 乳幼児と接する機会が多い。

一つでも当てはまる場合は、自己判断せずに早めに医療機関にご相談ください。


百日咳の診断と治療

百日咳の診断は、特徴的な咳の症状や経過に加えて、以下のような検査を組み合わせて行います。

  • 菌培養検査・遺伝子検査(LAMP法など): 喉や鼻の奥を綿棒でこすって検体を採取し、百日咳菌の有無を調べます。特に遺伝子検査(LAMP法)は感度が高く、早期診断に有用です。
  • 血液検査: 百日咳菌に対する抗体価を測定します。

治療は、主にマクロライド系の抗菌薬が用いられます。発症初期(カタル期)に治療を開始することで、症状の悪化を防ぎ、菌の排出期間を短縮する効果が期待できます。しかし、近年、このマクロライド系抗菌薬が効きにくい「耐性菌」の出現が国内外で報告されており、2024年以降、大阪府を含む国内の複数箇所でも検出されています。適切な診断と、必要に応じた薬剤感受性検査に基づく治療選択がますます重要になっています。

咳がひどい場合は、咳止めの薬や気管支拡張薬などが対症療法として使われることもあります。


家族みんなでできる!百日咳の予防と対策

百日咳から大切な家族を守るために、以下の予防と対策を徹底しましょう。

  1. 予防接種を受ける(最も重要!)
    • 子供: 定められたスケジュールに従って、百日咳ワクチンを含む予防接種(現在は主に5種混合ワクチン)を確実に受けさせましょう。
    • 大人:
      • 追加接種の検討: ワクチンの効果は時間とともに低下するため、特に妊婦さんやこれから妊娠を希望される方、生後間もない赤ちゃんや小さなお子さんと接する機会の多いご家族(祖父母の方も含む)は、追加のワクチン接種を検討することをおすすめします。
      • 日本小児科学会では、小学校入学前の1年間と、11~12歳の時期に、任意での三種混合ワクチンの追加接種を推奨しています。
      • 当クリニックでも、百日咳ワクチンの任意接種についてご相談に応じておりますので、お気軽にお声がけください。
  2. 日常生活での感染対策を徹底する
    • 咳エチケット: 咳やくしゃみをする際は、ティッシュやハンカチ、袖の内側などで口と鼻を覆いましょう。マスクの着用も有効です。
    • 手洗い・うがい: 外出後や食事前、咳やくしゃみを手で押さえた後などは、石けんと流水で丁寧に手を洗いましょう。うがいも習慣にしましょう。
    • アルコール消毒: 百日咳菌はアルコール消毒が有効です。ドアノブや手すり、リモコンなど、よく手が触れる場所をこまめに消毒しましょう。
    • 換気: 定期的に部屋の窓を開けて空気を入れ替えましょう。
  3. 咳が続く場合は早めに受診を
    • 長引く咳や、いつもと違うと感じる咳症状がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。
    • 受診する際は、周囲への感染拡大を防ぐためにマスクを着用してください。

百日咳は、大人にとっては「ただの長引く風邪」と軽視されがちですが、乳幼児にとっては命に関わることもある重大な感染症です。そして、その感染源の多くが、症状の軽い大人であるという事実を忘れてはいけません。

「自分は大丈夫」と思わず、正しい知識を持って、予防接種と日々の感染対策をしっかりと行うことが、ご自身だけでなく、大切なご家族、そして社会全体を守ることにつながります。

さいとう内科クリニックでは、百日咳が疑われる症状の方の診察・検査はもちろん、予防接種に関するご相談も承っております。長引く咳や気になる症状がございましたら、どうぞお早めにご相談ください。

医療法人社団好也会 さいとう内科クリニック 078-967-0019 ホームページ