- 9月 18, 2025
【肝臓病専門医監修】その顔色、肝臓の危険なサインかも?
「黄色・赤み・黒っぽさ」で見抜く内臓の不調

さいとう内科クリニック院長の斉藤です。
「最近、顔色が悪いんじゃない?」
ご家族や同僚から、ふと、こんな言葉をかけられたことはありませんか?
「ただの寝不足かな」「疲れているだけだろう」と見過ごしがちな顔色の変化。しかし、それは「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓からのSOSサインかもしれません。今回は、顔色や皮膚に現れる肝臓の不調のサインについて、専門医の立場から詳しく解説します。
最も注意すべきサイン:「黄色い」顔色(黄疸)

皮膚や白目が黄色っぽく見える状態を「黄疸(おうだん)」と呼びます。これは、肝臓の不調を示すサインの中で最も代表的で、注意が必要な症状です。
なぜ黄色くなるの?
私たちの体内では、古くなった赤血球が分解される過程で「ビリルビン」という黄色い色素が作られます。健康な肝臓は、このビリルビンを適切に処理し、便や尿として体外に排出します。
しかし、肝炎や肝硬変、肝臓がんなどによって肝機能が大きく低下すると、ビリルビンを処理しきれなくなり、血液中に溢れ出してしまいます。この溢れたビリルビンが皮膚や白目に沈着することで、体が黄色く見えるのです。
黄疸が出たら、すぐに受診を
重要なので繰り返しますが、黄疸は、肝臓の障害がかなり進行してから現れる症状です。もしご自身やご家族に黄疸の症状が見られた場合は、「様子を見よう」などとは思わずに、速やかに専門の医療機関を受診してください。
《注意》黄疸の原因は肝臓だけとは限りません
黄疸が出たからといって、必ずしも肝臓がんというわけではありません。黄疸の原因は、急性肝炎や肝硬変、胆石のほか、膵臓がんや胆道がんなど、肝臓周辺の臓器の病気である可能性も考えられます。
いずれにせよ、自己判断は絶対に禁物です。原因を正確に突き止めるためにも、必ず医師の診察を受けましょう。
黄疸以外にもある!見逃したくない皮膚のサイン
黄疸ほど有名ではありませんが、肝臓の不調は「赤み」や「黒っぽさ」として皮膚に現れることもあります。東洋医学の「望診」の考え方も参考に、ご自身の体をチェックしてみましょう。
「赤み」のサイン
手掌紅斑(しゅしょうこうはん)
手のひら、特に親指と小指の付け根のふくらんだ部分が、まだらに赤くなる症状です。慢性肝炎や肝硬変など、慢性的な肝臓の病気が進行している場合に見られることがあります。
鼻の頭の赤み
日焼けをしたわけでもないのに、鼻の頭だけが赤く、その赤みが数日経っても引かない場合も、肝臓が弱っているサインの一つと考えられています。
「黒っぽさ」のサイン
異常な日焼け・色素沈着
「以前より日に焼けやすくなった」「日焼けしたら、やけに肌が黒くなった」と感じることはありませんか?
これは、肝臓の機能低下によって、メラニン色素の代謝や排出がうまくいかなくなり、色素沈着を起こしている可能性があります。一見健康的に見えても、注意が必要なサインです。
気になるサインがあったら、何科を受診すべき?

では、これらの症状に気づいた場合、何科を受診すればよいのでしょうか。黄疸やその他の肝臓に関連する症状を専門とする診療科は消化器内科です。
受診の際には、
「いつから顔色が気になり始めたか」
「他に気になる症状(だるさ、食欲不振、尿の色の変化など)はないか」
といった点を医師に伝えると、スムーズな診断につながります。
早期発見のために、定期的な検診を

肝臓の病気は、自覚症状が出にくいのが特徴です。黄疸などの分かりやすいサインが現れたときには、病状がかなり進行しているケースも少なくありません。
そして、肝臓がんの原因も変化しています。かつてはウイルス性肝炎が中心でしたが、近年はアルコールや、肥満・糖尿病などを背景とした「代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)」から肝硬変・肝臓がんへと至る方が増えています。お酒を飲まないから安心、とは言えない時代なのです。
大切なのは、症状が出る前に、定期的な健康診断でご自身の肝臓の状態をチェックしておくことです。
健康診断で肝機能の数値に異常を指摘された方、そして今回ご紹介したような顔色や皮膚の変化が気になる方は、どうか放置せずに、お気軽に当院にご相談ください。