• 9月 20, 2025

【医師監修】健康診断で血圧が高い方へ。症状がなくても放置が危険な理由

ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
さいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

健康診断の結果を見て、「血圧が少し高めですね」と指摘された経験はありませんか?
「特に症状もないし、まだ大丈夫だろう」「薬を飲み始めるのは抵抗があるな…」
そう思って、ついそのままにしてしまっている方も少なくないかもしれません。

しかし、症状がないことこそ、高血圧の最も怖い特徴なのです。
今回は、なぜ高血圧が「サイレントキラー(静かなる暗殺者)」と呼ばれるのか、放置するとどのようなリスクがあるのか、そして今日から何ができるのかをお伝えします。


そもそも「高血圧」とは?基準値を知ろう

血圧とは、心臓から送り出された血液が血管の壁を押す力のことです。心臓が収縮して血液を送り出すときの最も高い圧力を「収縮期血圧(上の血圧)」、心臓が拡張して血液を取り込むときの最も低い圧力を「拡張期血圧(下の血圧)」と呼びます。高血圧症は、安静にしている状態で、この血圧が基準値よりも慢性的に高い状態を指します。

血圧分類診察室血圧(mmHg)家庭血圧(mmHg)
正常血圧120未満 かつ 80未満115未満 かつ 75未満
高血圧140以上 または 90以上135以上 または 85以上

※日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」より作成

緊張しやすい病院での測定(診察室血圧)だけでなく、リラックスした環境で測るご家庭での血圧(家庭血圧)が治療方針を決める上で非常に重要です。健康診断で指摘された方は、ぜひご自宅で血圧を測る習慣をつけてみてください。


【最重要】なぜ、症状がないのに危険なのか?

高血圧が「サイレントキラー」と呼ばれる最大の理由は、自覚症状がほとんどないまま静かに血管を傷つけ、動脈硬化を進行させてしまうことにあります。

血圧が高い状態が続くと、血管は常に内側から強い圧力を受け続けることになります。すると、血管の壁は次第に厚く、硬く、もろくなっていきます。これが「動脈硬化」です。

動脈硬化が進行しても、初期段階では痛みも何も感じません。しかし、血管の内側が狭くなったり、詰まりやすくなったりすることで、ある日突然、命に関わる重大な病気を引き起こすのです。


放置した先にある「5つの深刻な未来(合併症)」

高血圧によって動脈硬化が進行すると、特に脳・心臓・腎臓といった重要な臓器に深刻なダメージを与えます。症状が出てからでは手遅れになるケースも少なくありません。

  1. 脳出血:もろくなった脳の血管が破れて出血します。激しい頭痛や意識障害、手足の麻痺などが起こり、後遺症が残ることもあります。
  2. 脳梗塞:脳の血管が詰まり、脳細胞が壊死します。ろれつが回らない、体の片側が動かないなどの症状が現れ、これも深刻な後遺症の原因となります。
  3. 心筋梗塞・狭心症:心臓に栄養を送る血管が狭くなったり(狭心症)、詰まったり(心筋梗塞)します。突然の激しい胸の痛みが特徴で、命を落とす危険性が高い病気です。
  4. 心不全:心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送れなくなった状態です。少し動いただけでも息切れやむくみが起こり、徐々に生活の質が低下します。
  5. 慢性腎臓病:腎臓の血管に負担がかかり続け、硬化することにより機能が低下します。進行すると体内の老廃物を排出できなくなり、生涯にわたって人工透析が必要になることもあります。

これらの病気は、発症するまで静かに進行します。だからこそ、症状がない段階での対策が何よりも重要なのです。


あなたの生活にも?高血圧の主な原因

高血圧の約9割は、特定の原因が見つからない「本態性高血圧」です。体質に、以下のような様々な生活習慣が組み合わさって起こると考えられています。

  • 塩分の摂りすぎ:日本人の食生活は塩分が多くなりがちです。目標は1日6g未満です。
  • 肥満:特に内臓脂肪が増えると、血圧を上げる物質が分泌されやすくなります。
  • 遺伝的要因:高血圧になりやすい体質は遺伝することがあります。
  • 運動不足:運動は血圧を安定させ、心肺機能を高める効果があります。
  • 過度な飲酒:飲み過ぎは血圧を上昇させます。
  • 喫煙:タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、血圧を上げ、動脈硬化を促進します。
  • ストレス:精神的な緊張は血圧を上昇させます。
  • 加齢:年齢とともに血管のしなやかさが失われ、血圧は上がりやすくなります。
  • 不眠:睡眠不足が続くと、自律神経やホルモンバランスが乱れ、血圧が上昇しやすくなります。

今日から始められる高血圧対策

高血圧治療の基本は、薬を飲むことだけではありません。まずは生活習慣を見直すことから始まります。

  1. 減塩を心がける:麺類の汁を飲まない、漬物を控える、香味野菜やスパイスを活用するなど、小さな工夫から始めましょう。
  2. 栄養バランスの良い食事:野菜や海藻類を積極的に摂り、脂肪の多い肉類やコレステロールを控えましょう。
  3. 適正体重を維持する:肥満の方は、まずは今の体重から1〜2kg減らすことを目標にしてみましょう。
  4. 定期的な運動:ウォーキングなど、軽く汗ばむ程度の有酸素運動を1日30分程度、週に3日くらい行うのが効果的です。
  5. お酒はほどほどに:飲む場合は適量を守り、休肝日を設けましょう。
  6. 禁煙する:禁煙は血圧だけでなく、多くの病気のリスクを下げます。

症状のない今こそ、未来の健康への第一歩を

高血圧は、症状がないからこそ、つい後回しにしてしまいがちな病気です。しかし、放置すれば命に関わる病気のリスクを高める、紛れもない「静かなる脅威」です。

逆に言えば、症状のない健康な今だからこそ、生活習慣を見直し、血圧を管理することで、10年後、20年後の深刻な病気を予防することができるのです。

健康診断で高血圧を指摘された方、ご自身の血圧が気になる方、何から始めれば良いか分からないという方は、どうか一人で悩まず、お気軽に当院へご相談ください。医師と一緒に、あなたに合った対策や治療を考えていきましょう。

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