- 9月 26, 2025
【医師監修】コレステロール・中性脂肪が高い方へ。症状がないのに危険な「脂質異常症」とは?

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
さいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。
健康診断で、「コレステロールや中性脂肪の数値が高いですね」と指摘されたことはありませんか?
高血圧と同じように、脂質異常症(高脂血症)もほとんど自覚症状がありません。
「特に体調は悪くないから…」と、そのままにしている方も多いのではないでしょうか。
しかし、この症状がない状態こそが、脂質異常症の注意すべき点です。気づかないうちに、体の中では静かに血管の老化(動脈硬化)が進行し、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気を引き起こす可能性があるのです。
今回は、脂質異常症とはどのような病気で、なぜ危険なのか、そして健やかな毎日を守るために何ができるのかをお伝えします。
「脂質異常症」とは?まずは健康診断の結果をチェック
脂質異常症とは、血液に含まれる脂質、特に「コレステロール」や「中性脂肪」の量が基準値から外れてしまった状態のことです。よく「血液がドロドロ」と表現されますが、まさにそのイメージです。
健康診断では、主に以下の3つの項目をチェックします。ご自身の結果と見比べてみてください。
項目 | 基準値(空腹時) | どんな状態? |
LDL(悪玉)コレステロール | 140 mg/dL未満 | 高すぎるとNG |
HDL(善玉)コレステロール | 40 mg/dL以上 | 低すぎるとNG |
トリグリセライド(中性脂肪) | 150 mg/dL未満 | 高すぎるとNG |
※いずれか1つでも基準値を外れると「脂質異常症」と診断されます。
ちょっと豆知識:「悪玉」と「善玉」って何が違うの?

コレステロール自体は、細胞膜やホルモンの材料になる、体にとって不可欠な物質です。ではなぜ「悪玉」「善玉」と呼ばれるのでしょうか?
それは、コレステロールを運ぶ「乗り物(リポたんぱく)」の働きの違いにあります。
- 悪玉(LDL):肝臓で作られたコレステロールを全身の細胞へ運ぶ役割。増えすぎると、余ったコレステロールが血管の壁に溜まってしまいます。
- 善玉(HDL):全身で使いきれなかった余分なコレステロールを回収し、肝臓へ戻す役割。いわば「血管のお掃除役」です。
つまり、悪玉が増えすぎても、善玉が少なすぎても、血管内にコレステロールが溜まりやすくなってしまうのです。
症状がないのに、なぜ危険?「動脈硬化」の静かなる進行

脂質異常症が本当に怖いのは、自覚症状がないまま、血管の内側で動脈硬化を静かに進行させてしまう点にあります。
- プラーク(塊)ができる:増えすぎた悪玉コレステロールが血管の壁に入り込み、ドロドロとした塊(プラーク)を作ります。これにより血管の壁は厚くなり、内側は狭くなっていきます。
- プラークが破れる:このプラークは不安定で壊れやすく、何かの拍子に破れてしまうことがあります。
- 血栓(血の塊)ができる:体が傷を治そうとして、破れた部分に血の塊(血栓)を作ります。
- 血管が詰まる:この血栓が大きくなって血管を完全に塞いでしまうと、その先に血液が流れなくなり、臓器がダメージを受けます。
これが、心臓で起これば心筋梗塞、脳で起これば脳梗塞となるのです。
原因は食生活だけじゃない?あなたのタイプは?
脂質異常症の原因は、主に生活習慣にありますが、どの数値が高いかによって少し異なります。
- 悪玉(LDL)が高いタイプ:肉の脂身やバターなどの動物性脂肪、卵やレバーなどコレステロールの多い食品の摂りすぎが主な原因です。
- 善玉(HDL)が低いタイプ:運動不足、肥満、喫煙などが原因と考えられます。
- 中性脂肪(TG)が高いタイプ:食べ過ぎや、アルコールの飲み過ぎ、甘いものの摂りすぎが大きく影響します。
また、中には生活習慣に気をつけていても、遺伝的な要因でコレステロール値が高くなる「家族性高コレステロール血症」という病気もあります。ご家族にコレステロールが高い方や、若くして心筋梗塞などを発症した方がいる場合は、一度医師に相談することをおすすめします。
今日からできる!血管を若返らせる生活習慣

脂質異常症の治療の基本は、薬だけに頼ることではなく、生活習慣の改善から始まります。
食事の合言葉は「オ・サ・カ・ナ・ス・キ・ヤ・ネ」

バランスの良い食事を基本に、以下の食品を積極的に取り入れてみましょう。血液をサラサラにし、血管を健やかに保つ助けになります。
オ:お茶 サ:魚(特にサバやイワシなどの青魚) カ:海藻類 ナ:納豆などの大豆製品 ス:お酢 キ:きのこ類 ヤ:野菜 ネ:ねぎ・玉ねぎ |
同時に、ご飯やパン、お菓子、果物といった糖質の摂りすぎは中性脂肪を増やす原因になるため、適量を心がけましょう。
まずは歩くことから!運動習慣をプラス

運動は、中性脂肪を減らし、善玉コレステロールを増やす効果が期待できます。まずは、少し息が弾む程度のウォーキングを1日30分、週3回続けることから始めてみましょう。
自分の数値を正しく知り、未来の健康を守りましょう

脂質異常症は、症状がないからこそ「自分ごと」として捉えにくい病気です。しかし、放置すれば、10年後、20年後のあなたの健康を大きく脅かすサイレントキラーとなり得ます。
大切なのは、健康診断の結果をただ眺めるだけでなく、自分の数値がどのタイプで、どんなリスクがあるのかを正しく知ることです。そして、生活習慣を少しずつでも見直していくことが、未来の心筋梗塞や脳梗塞を防ぐための最も確実な一歩となります。
健康診断で異常数値を指摘された方、食生活に不安がある方は、ぜひ一度当院へご相談ください。あなたのリスクに合わせた治療目標や、生活習慣の改善について、一緒に考えていきましょう。