- 9月 29, 2025
- 10月 6, 2025
【医師監修】胃がんの初期症状と原因|早期発見のために知っておくべきこと

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
さいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。
胃がんは、かつて日本人のがんによる死亡原因の第1位でしたが、現在では検診の普及や原因の解明により、死亡者数は減少傾向にあります。しかし、今なお罹患数(新たに見つかる患者数)は非常に多い、私たちにとって大変身近ながんの一つです。
胃がんの最大の特徴は、「初期には特有の症状がほとんどない」こと。
そして、「早期に発見できれば、完治を目指せる可能性が高い」ことです。
今回は、ご自身と大切なご家族の健康を守るために知っておきたい、胃がんの症状や原因、そして最も重要な「早期発見のための検査」についてお伝えします。
胃がんの代表的な症状

胃がんが進行すると、以下のような症状が現れることがあります。
- 胃やみぞおちの痛み
- 胃の不快感、胃もたれ、胸やけ
- お腹の張り、吐き気
- 食欲不振、体重減少
- 貧血によるめまいやふらつき
- 黒色便(タール便)
【最も重要な注意点】
これらの症状は、胃炎や胃潰瘍など、他のありふれた病気でも起こります。胃がんに特有の初期症状というものは、残念ながらありません。
「いつもの胃痛だから」「食べ過ぎただけだろう」といった自己判断が、発見を遅らせる最も大きな原因になります。症状が続く場合は、必ず消化器内科を受診してください。
胃がんの主な原因は「ピロリ菌感染」

胃がんが発生するメカニズムは完全には解明されていませんが、リスクを高める要因は明らかになっています。その中でも最大の原因と考えられているのが「ヘリコバクター・ピロリ菌」の感染です。
ピロリ菌が胃の粘膜に長期間棲みつくと、慢性的な炎症が起こります。この炎症が続くと胃の粘膜が萎縮(萎縮性胃炎)し、胃がんが発生しやすい土壌となってしまうのです。
その他、以下のような要因もリスクを高めるとされています。
- 食生活:塩分の多い食事
- 生活習慣:喫煙、多量の飲酒
- 家族歴:ご家族に胃がんの既往歴がある
幸いなことに、ピロリ菌は検査で発見でき、お薬で除菌することが可能です。ピロリ菌を除菌することは、将来の胃がんリスクを大幅に低減させる、最も効果的な予防法の一つです。
早期発見が鍵。バリウム検査と胃カメラ、どちらを受けるべき?
症状が当てにならない胃がんを早期発見するためには、定期的な検診が不可欠です。代表的な検査には「バリウム検査」と「胃カメラ検査」があります。
「どちらの検査を受ければいいの?」という疑問に、それぞれのメリット・デメリットをまとめました。
バリウム検査(胃部X線検査) | 胃カメラ検査(内視鏡検査) | |
メリット | ・費用が比較的安い ・胃全体の形や動きがわかる ・スキルス胃がんの発見が得意な場合がある | ・放射線被ばくがない ・食道、胃、十二指腸の粘膜を直接、鮮明に観察できる ・粘膜の色の変化などで、ごく初期の病変を発見できる ・疑わしい部分の組織を採取し、確定診断ができる |
デメリット | ・放射線被ばくがある ・粘膜の色の変化は分からない ・ごく初期の小さながんは見つけにくい ・異常が見つかると、結局胃カメラが必要になる ・検査後の下剤服用や、げっぷを我慢するのがつらい | ・費用が比較的高め ・嘔吐反射が辛い場合がある (経鼻内視鏡や鎮静剤で軽減可能) |
【専門医としてのおすすめ】

病変を早期に、そしてより確実に発見するという点では、胃カメラ検査が圧倒的に優れています。 粘膜を直接観察し、その場で組織を採って確定診断までできるのは胃カメラだけの大きな利点です。そのため、当院では、バリウム検査よりも胃カメラ検査を強く推奨しております。
「検査がつらそう」という方でも、当院では口からより楽な鼻からの内視鏡検査や、うとうと眠っている間に検査が終わる鎮静剤(静脈麻酔)を使用した内視鏡検査も行っております。血圧や脈拍、酸素飽和度測定をしっかりとモニタリングしつつ安全に最大限配慮しながら検査を行っております。月曜日から土曜日まで、午前、午後の両方とも診療時間内にて実施しておりますので、安心してご相談ください。
40歳からは定期的な胃カメラ検査を

胃がんから身を守るために、私たちができることは非常にシンプルです。
1.症状がなくても、40歳を過ぎたら定期的に胃カメラ検査を受ける 2.胃カメラ検査でピロリ菌感染が疑われたら、ピロリ菌検査も受ける 3.ピロリ菌感染が認められたら、除菌治療を行う |
ピロリ菌の除菌を希望される方は、除菌前に、胃がんがないことを胃カメラ検査で必ず確認しておく必要があります。また、ピロリ菌の除菌が成功したとしても、胃がんのリスクが10分の1くらいまでしか低減しないため、年1回の胃カメラ検査をお勧めしております。
お薬アレルギーがある方は、除菌治療が難しい場合があります。お薬アレルギーの有無について、医師に申告してください。ピロリ菌感染が認められるものの、お薬アレルギーにより除菌治療が難しいと判断された場合には、年に1回の胃カメラ検査がさらに重要になります。
胃カメラ検査を受けて、仮に胃がんが見つかったとしても、早期に発見すれば決して怖い病気ではありません。しかし、発見が遅れると治療が困難になることも事実です。「症状がないから大丈夫」と過信せず、ご自身の未来のために、定期的な胃カメラ検査をぜひ習慣にしてください。
健康診断で異常を指摘された方、胃の不調が続く方、ピロリ菌の検査を受けたことがない方は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。胃カメラ検査でなるべく苦痛に感じられないよう精一杯力を尽くしますので、お気軽にお問い合わせくださいね。