- 9月 30, 2025
- 10月 7, 2025
【医師監修】その胃痛、ただの胃炎?放置が危険な慢性胃炎とピロリ菌の話

いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
さいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。
「胃がキリキリ痛む」「なんだか胃が重たい、ムカムカする…」
こうした胃の不調は、多くの方が一度は経験したことのある、ありふれた症状です。市販薬で様子を見たり、「いつものことだから」と我慢したりしている方も多いのではないでしょうか。
しかし、その「いつもの胃炎」、もしかしたら将来の胃がんのリスクを高める危険なサインかもしれません。
今回は、胃炎の種類とその原因、特に注意が必要な「慢性胃炎」と、その最大の原因である「ピロリ菌」について、お伝えいたします。
あなたの胃炎はどのタイプ?「急性」と「慢性」の違い
「胃炎」と一言で言っても、原因や経過によって大きく2つのタイプに分けられます。
1. 急性胃炎
食べ過ぎや飲み過ぎ、唐辛子などの香辛料、過度なストレスなどが原因で、胃の粘膜が急に炎症を起こした状態です。
急な胃痛や胸やけ、吐き気といった比較的はっきりした症状が特徴で、原因を取り除けば数日で自然に治ることがほとんどです。
2. 慢性胃炎
胃の炎症が長期間にわたって続いている状態です。胃が重い、食欲不振といった鈍い症状が続いたり、時には自覚症状がまったくないこともあります。
問題なのは、この慢性胃炎の約80%が「ピロリ菌」の感染によって引き起こされているという点です。
胃がんへと続く危険な坂道:「萎縮性胃炎」とは

ピロリ菌に長期間感染し、慢性的な炎症が続くと、胃の粘膜は徐々に薄く、痩せ細ってしまいます。この状態を「萎縮性胃炎(いしゅくせいいえん)」と呼びます。
胃の粘膜の萎縮が進むと、胃がんが発生しやすい土壌となってしまいます。実際に、胃がんが発生するまでの危険な流れは以下のようになっていると考えられています。
ピロリ菌感染による「慢性胃炎」 → 「萎縮性胃炎」 → 「腸上皮化生(粘膜が腸のように変化)」 → 「胃がん」
つまり、萎縮性胃炎は「がんになる前の状態(前がん病変)」とも言えるのです。この流れを断ち切るためには、原因であるピロリ菌を治療し、ご自身の胃の状態を定期的に胃カメラ検査にてチェックすることが非常に重要になります。
胃炎の治療:根本原因を断つ「ピロリ菌除菌」

胃炎の治療は、症状を和らげる薬物療法や生活習慣の改善と並行して、原因に応じたアプローチを行います。
慢性胃炎の根本原因であるピロリ菌に対しては、「除菌治療」が最も効果的です。
ピロリ菌の除菌治療とは?
- 抗菌薬2種類と胃酸を抑える薬1種類の合計3種類を、1日2回、1週間服用する治療です。1回目の治療で除菌が不成功であった場合は、薬の組み合わせを変更して、2回目の治療を同様のスケジュールで行います。
- 1回目の治療での成功率は約90%、2回目の治療での成功率は約92%であり、2回目まで治療を行えば99%以上の方が除菌に成功します。
- 胃カメラ検査で慢性胃炎と診断されれば、保険適用で除菌治療が受けられます。
この除菌治療によって、胃がんへと続く危険な流れを食い止めることが期待できます。
【重要】除菌後も、定期的な胃カメラ検査を

「ピロリ菌を除菌すれば、もう安心?」と思われるかもしれませんが、一つだけ非常に重要な注意点があります。
それは、除菌に成功しても、胃がんのリスクはゼロにはならないということです。
除菌は、それ以上の炎症の進行や粘膜の萎縮を防ぐための治療です。しかし、除菌するまでに進んでしまった萎縮(荒れた畑)は元には戻りません。その畑から、将来がんが発生する可能性は残ってしまいます。ピロリ菌は免疫が確立するまでの幼少期までに、親族からの食べ物の口移しなどで感染するため、かなり長い年月にわたるピロリ菌感染が持続してしまっており、除菌が成功しても胃がんリスクがゼロにはならないのです。
だからこそ、ピロリ菌の感染歴がある方は、除菌が成功した後も、1年に1回は定期的に胃カメラ検査を受け、ご自身の胃の状態をチェックし続けることが、胃がんの早期発見のために何よりも大切なのです。
その胃の不調、専門医にご相談ください

「ただの胃炎」と軽視されがちな胃の不調。その背景には、ピロリ菌感染による慢性胃炎と、その先にある胃がんのリスクが隠れているかもしれません。
●食べ過ぎやストレスによる「急性胃炎」 ●ピロリ菌が原因で、無症状のことも多い「慢性胃炎」 |
この2つは全くの別物です。ご自身の症状がどちらのタイプか、そしてピロリ菌に感染していないかを知ることが、未来の健康を守る第一歩です。
胃の不快な症状が続く方、ピロリ菌の検査を受けたことがない方は、ぜひ一度当院までご相談ください。胃カメラ検査で胃の状態を正確に診断し、あなたに最適な治療を親身になってご提案させていただきます。