- 6月 22, 2026
上の血圧と下の血圧、どちらが重要?「血管の老化」を示す危険なサインと年齢別の高血圧対策

こんにちは。
神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。
健康診断や自宅での血圧測定で、「上の血圧(収縮期血圧)」と「下の血圧(拡張期血圧)」の2つの数値が表示されたとき、どちらか一方だけを見て一喜一憂していませんか?
「上は高いけれど、下が正常だからまだ大丈夫」「下だけが少し高いけれど、上が120台だから問題ないだろう」など、片方だけの数値で安心してしまうのは大変危険な落とし穴です。
実は、上の血圧と下の血圧はそれぞれ心臓や血管の異なる状態を反映しており、年齢層によっても注目すべきポイントや将来の病気のリスクが大きく変わります。今回は、上下の血圧が持つ医学的な意味や、血管の老化を知らせる危険なサイン「脈圧」の正体、そして今日から始められる年齢別の正しい対処法について、徹底的に解説します。
■1. 血圧の基本:上の血圧・下の血圧とは何か?

まず、上の血圧と下の血圧が体の中でどのような現象を示しているのか、その基本構造をシンプルに整理しましょう。
上の血圧(収縮期血圧)
心臓がギュッと力強く収縮し、内部の血液を全身の血管へとドーンと押し出すときに、血管の壁にかかる最大の圧力のことです。これは主に「心臓のポンプとしての力」や「太い大動脈のしなやかさ」を反映しています。
下の血圧(拡張期血圧)
収縮した心臓がゆったりと拡張し、次の拍動に備えて血液を内部に溜め込んでいる(休んでいる)間に、血管の壁にじわっとかかり続けている最小の圧力のことです。心臓が休んでいる時間であっても、血液を途切れなく末梢まで送り続けるために、血管自体の弾力や緊張度によって生まれる圧力です。
高血圧の基本的な診断基準
高血圧管理・治療ガイドライン(日本高血圧学会 JSH2025など)において、診察室での測定で「上の血圧が140mmHg以上」または「下の血圧が90mmHg以上」のいずれか一方、あるいは両方を満たした場合に高血圧と診断されます。
■2. 50歳未満の若い世代で注意したい「下の血圧だけが高い」状態

比較的若い世代(若年〜中年層)の健康診断でよく見られるのが、「上の血圧は120〜130台で正常なのに、下の血圧だけが95〜100近くある」というパターンです。医学的にはこれを「孤立性拡張期高血圧」と呼びます。
なぜ下だけが高くなるのか?
若い世代のうちは、心臓に近い太い大動脈そのものにはまだ十分な柔らかさと弾力性があるため、心臓が血液を押し出したときの発動圧(上の血圧)を柔軟に吸収・クッションのように受け止めることができます。そのため上の血圧は上がりにくいのです。
しかし、以下のような生活習慣の乱れが重なると、手足の先などにある細い「末梢血管」がギューッと収縮し、血液が通りにくくなります。
- 過度な精神的ストレスや睡眠不足: 自律神経のバランスが乱れて交感神経が常に優位になり、血管を収縮させるストレスホルモンが過剰に分泌されます。
- 塩分の摂りすぎ・肥満: 血液中の水分量(血液量そのもの)が増え、血管に慢性的な圧力をかけ続けます。
- 運動不足や飲酒・喫煙: 血管のしなやかさを維持する機能(血管内皮機能)が低下し、細い血管の通り道が狭くなります。
水道のホースの先端を指でつまむと、ホースの内部の圧力が一気に高まって水が勢いよく飛び出すのと同様に、末梢血管の抵抗(末梢血管抵抗)が強まることで、心臓が休んでいる時間帯でさえ血管が常に高い緊張状態に晒されるようになります。これが下の血圧を押し上げるメカニズムです。
下の血圧が高い状態は、血管が「常に緊張して悲鳴を上げ始めている初期のサイン」です。この段階で放置すると血管の内壁が慢性的に傷つき、将来的に本格的な高血圧へと移行したり、若くして心筋梗塞や全身の動脈硬化を進行させるリスクが高まるため、決して見逃してはいけない警告と言えます。
■3. 60歳以上の高齢の方で注目すべき「上の血圧」と危険サイン「脈圧」

一方で、60〜65歳以上のシニア世代になると、血圧の現れ方のトレンドは大きく変化します。大半の方が「上の血圧は150〜160と高いのに、下の血圧は70台に下がっている、あるいは変化しない」という状態になり、これを「孤立性収縮期高血圧」と呼びます。
血管の老化を示すものさし「脈圧」
ここで極めて重要になる指標が、上の血圧と下の血圧の数値の引き算である「脈圧(みゃくあつ)」です。
例えば、血圧が「160/70mmHg」の方の場合、160から70を引いた「90」が脈圧となります。医学的に、この脈圧の理想値はおおむね「40〜50mmHg」とされており、脈圧が「60mmHg以上」に広がっている場合は、血管の老化(動脈硬化)がかなり進行している危険なサインと捉えられます。
なぜ高齢になると上の血圧が上がり、下が下がるのか?
年齢を重ねるにつれて、血管の壁には少しずつコレステロールなどが沈着し、ゴムのようにしなやかだった大動脈が土管のように硬くもろくなっていきます(動脈硬化)。
血管が硬くなると、心臓が収縮したときのドーンという強い圧力を血管壁が柔らかく吸収して分散させることができなくなり、圧力がダイレクトに伝わって上の血圧が跳ね上がります。逆に、心臓が拡張して休んでいるときには、血管が元の形にしなやかに縮んで血液を押し返す力が失われているため、下の血圧は逆に低下していくのです。その結果、上の血圧と下の血圧の差(脈圧)がどんどん大きく開いていきます。
脈圧が大きい状態が続くということは、それだけ脳や心臓、腎臓といった重要な臓器に、毎回の拍動ごとにガツンガツンと激しい衝撃波(強い圧力)が直接加わり続けていることを意味します。この状態の放置は、脳出血、脳梗塞、心不全、重大な大動脈疾患の発症リスクを跳ね上げるため、シニア世代においては特に「上の血圧の数値」と「脈圧の開き具合」を厳格にモニタリングする必要があります。
■4. 【要注意】夜間だけ血圧が高くなる隠れたリスク

上下の数値だけでなく、「時間帯による血圧の変化」にも注意が必要です。通常、人間の血圧はリラックスして眠っている夜間には低くなるのが正常な生理現象です。しかし、中には「昼間の血圧は正常なのに、夜間や就寝中に血圧が高くなる(または下がらない)」という「夜間高血圧」のパターンを持つ方がいます。
夜間高血圧の大きな原因の一つとして、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」という隠れた病気が挙げられます。
睡眠中に一時的に何度も呼吸が止まり、体が重度の酸素不足(低酸素状態)に陥ると、脳が危機を察知して交感神経を激しく興奮させ、夜間にもかかわらず血管をギューッと収縮させて血圧を急上昇させてしまいます。
「しっかり寝ているはずなのに疲れが取れない」「日中に強い眠気がある」「いびきを指摘される」といった自覚症状があり、下の血圧や全体の血圧がなかなか下がらない方は、睡眠時無呼吸の適切な評価やスクリーニングを行うことが、高血圧の根本原因を突き止める重要な一歩となります。
■5. 血圧の理想的なバランスを保ち、血管を若返らせるための生活習慣

上下の血圧のアンバランスや動脈硬化のリスクを抑え、血管のしなやかさを取り戻すためには、毎日の生活習慣のトータルなアプローチが極めて効果的です。今日から実践できるポイントをまとめました。
- 徹底的な塩分コントロール(1日6g未満): 塩分を摂りすぎると血液のボリュームが増え、血管壁への圧力が逃げなくなります。加工食品や外食に潜む「隠れ塩分」に注意し、ラーメンのスープは残す、出汁やレモン、スパイスを効かせて調味料の量を減らす「薄味の習慣」に脳と舌を慣らしていきましょう。
- カリウムを豊富に含む植物ベースの食事: 野菜や果物、豆類(バナナ、ほうれん草、アボカド、大豆製品など)に豊富に含まれるカリウムは、体内の余分なナトリウム(塩分)の排出を強力にサポートし、末梢血管の緊張を和らげる効果が期待できます。朝食にスムージーを取り入れるなどの工夫がおすすめです(※腎機能が低下している方はカリウム制限が必要な場合があるため要相談)。
- 週150分以上の中強度有酸素運動: ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、水泳など、少し息が弾むけれど笑顔でおしゃべりができる程度の有酸素運動を、1回30分以上、週に3回以上継続しましょう。これにより血管の柔軟性が高まり、末梢血管の抵抗が自然と下がって、特に下の血圧の改善に高い効果を発揮します。
- 質の高い睡眠とストレス管理: 睡眠不足やイライラは交感神経を直撃し、血管を収縮させます。夜は7〜8時間の適切な睡眠時間を確保し、就寝前のスマホを控えてリラックスできる環境を整えましょう。
- 禁煙と「節度ある飲酒」: タバコに含まれるニコチンは血管を劇的に収縮させ、血管の内壁を傷つけて動脈硬化を爆発的に加速させます。お酒も大量摂取は血圧を大きく押し上げるため、ビールなら500ml、日本酒なら1合程度までの「適量」を心がけましょう。
■6. 正しい家庭血圧測定のすすめ:「測る・記録する・相談する」

血圧は、心身の緊張、時間帯、気温などによってジェットコースターのように常に変動しています。病院の診察室で測るときだけ緊張して高くなってしまう「白衣高血圧」のようなケースもあるため、医師が治療方針を決定する上で最も信頼するのは、リラックスした環境で毎日測定される「家庭血圧データ」です。
以下の「正しい測定ルール」をマスターし、朝と夜の数値をしっかりと手帳やアプリに記録する習慣を始めましょう。
正しい測定のタイミングと手順
- 朝の測定: 起床後1時間以内、排尿(トイレ)を済ませた後、朝食を食べる前、かつ高血圧のお薬を飲む前に測定します。
- 夜の測定: 就寝直前のリラックスした状態で測定します(入浴や飲酒、運動の直後は血圧が大きく変動するため、最低でも30分以上あけてから測定してください)。
- 正しい姿勢: 脚は組まず、背筋を伸ばして椅子に腰掛けます。測定する腕をテーブルの上に乗せ、カフ(腕帯)の位置が「心臓と同じ高さ」になるように正しく巻きます。1〜2分静かに安静にしてから測定ボタンを押し、可能であれば2回測定してその平均値をその日の記録とします。
■まとめ

上の血圧、下の血圧、そしてその差である「脈圧」は、それぞれがあなたの体の中で起きている心臓の働きや血管の硬さ、緊張状態をリアルタイムに教えてくれる貴重なメッセージです。
「上が高いから危ない」「下が低いから安心」と単純にどちらか一方だけで片付けるのではなく、自分の年齢や体質、生活背景に合わせて、どの数字がどんなサインを出しているのかを総合的に見極めることが、10年後、20年後の脳卒中や心筋梗塞を未然に防ぐ最大の鍵となります。
「最近、上と下の差が広がってきた気がする」「下だけが高くて生活習慣を見直したいけれど、何から始めればいいかわからない」という方は、ぜひ一度さいとう内科クリニックへお気軽にご相談ください。

当院では、丁寧な家庭血圧データのファクトチェックに加え、必要に応じて心エコー検査などで心臓や血管の動きを詳しく確認し、患者様お一人おひとりの年齢やライフスタイルに合わせた最適な健康管理プランをトータルでサポートしています。血管の健康を正しく守る一歩を、一緒に踏み出していきましょう。
- 院長
- 斉藤 雅也
- 診療内容
- 内科・消化器科
- 住所
- 〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3(駐車場18台あり)
(旧:森岡内科医院) - 電話
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- 駐車場18台完備!
- アクセス
- 当院は神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。風邪や生活習慣病など、かかりつけ医としてお気軽にご利用ください。
