【犬や猫に噛まれたら破傷風になる？】感染の確率と危険性、すぐに病院へ行くべき理由

こんにちは、神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。

ご家庭で飼っているペットの犬や猫にうっかり噛まれてしまった、あるいは、道端で野良猫に引っかかれて血が出た、といった経験はありませんか？

その際、「このくらいの傷で病院に行くべきか？」「犬や猫に噛まれたら破傷風になる確率はどのくらい？」と不安になっておられる方も多いと思います。

結論から申し上げますと、破傷風になる確率はゼロではありません。

破傷風は、発症すると命に関わる非常に恐ろしい病気です。「確率が低いから大丈夫」と自己判断してしまうのは、実はとても危険なことなのです。

今回は、動物による傷と破傷風のリスクについて、なぜすぐに病院へ行くべきなのか、ワクチンの重要性も含めてお伝えします。

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1. そもそも「破傷風」とはどんな病気？

破傷風とは、「破傷風菌」という細菌が、傷口から体内に侵入することで起こる感染症です。この破傷風菌は、世界中の土壌（土）の中に広く存在しています。

問題なのは、この菌が体内で増殖する際に出す「毒素」です。この毒素が神経に作用し、口が開きにくくなったり、顔の筋肉がこわばったりすることから始まり、やがて全身の筋肉のけいれんや呼吸困難を引き起こします。現代の医療をもってしても治療は非常に困難で、命に関わる病気です。

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2. 「犬や猫に噛まれたら」破傷風になる確率

「破傷風は土の中の菌」と聞くと、犬や猫に噛まれても関係ないように思えるかもしれません。しかし、その考えは危険です。

野良犬や野良猫の場合:

土の上を歩き回り、土に触れたエサを食べるため、口の中や爪に破傷風菌が付着しているリスクは十分にあります。

室内飼いのペットの場合:

犬が散歩で土の上を歩き、その足を口で舐めたりすれば、菌が口内に存在する可能性はあります。猫も同様です。

傷口からの感染:

噛まれたり引っかかれたりした傷口が、土やほこりに触れることでも感染リスクは生じます。

「破傷風になる確率」を具体的な数字（％）でお答えすることは難しいですが、重要なのは「動物による傷＝破傷風のリスクがある傷」と認識することです。

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3. 噛まれたり、引っかかれたりしたらどうする？

もし動物によって傷ができた場合、慌てずに以下の対応を行ってください。

① すぐに自分でできる応急処置

「すぐに、大量の流水と石鹸で傷口をよく洗う」

これが最も重要です。傷口を清潔にし、菌をできるだけ洗い流すことが、破傷風だけでなく、他の細菌感染（化膿）を防ぐ第一歩となります。

② すぐに医療機関を受診する

傷の深さや出血の量に関わらず、動物に噛まれたり引っかかれたりした場合は、必ず医療機関（外科、皮膚科、内科など）を受診してください。

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4. 病院での処置と「破傷風ワクチン」の重要性

病院では、主に2つの対応を行います。

A. 傷口の処置

まずは感染症を防ぐため、傷口を徹底的に洗浄・消毒します。必要に応じて、化膿を防ぐための抗生物質（破傷風菌とは別の細菌用）を処方します。

B. 破傷風の「発症予防」

ここが最も重要です。破傷風は「発症してからでは遅い」ため、発症を未然に防ぐ「予防」が治療のすべてと言っても過言ではありません。

1.ワクチン接種歴の確認

日本では、多くの方が子どもの頃に「三種混合ワクチン（DPT）」や「四種混合ワクチン」を接種しています。この中に破傷風ワクチンも含まれています。

問題は、「最後に接種してから何年経っているか」です。

2.破傷風ワクチン（トキソイド）の接種

破傷風ワクチンの効果（免疫）は、時間とともに弱まっていきます。一般的に、最後の接種から10年以上経過している場合は、免疫が不十分である可能性が高いため、ケガをした時点での追加接種（暴露後予防）が推奨されます。

もちろん、接種歴が不明な方や、一度も接種したことがない方も、接種の対象となります。

3.抗破傷風ヒト免疫グロブリン（TIG）

傷が非常に汚れている場合や、破傷風発症のリスクが特に高いと医師が判断した場合は、ワクチンの効果が出るまでの間、菌の毒素を中和するための「抗破傷風ヒト免疫グロブリン（TIG）」という注射をワクチンと同時に行うこともあります。

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5. まとめ：ためらわずにご相談ください

「犬に軽く噛まれただけ」「猫にちょっと引っかかれただけ」と軽く考えるのは禁物です。破傷風のリスクは確率の問題ではなく、ゼロではない以上、万全の対策をとるべきです。動物によるケガは、ためらわずに医療機関を受診してください。

当院でも、傷の処置や破傷風ワクチンの必要性の判断、接種に対応しております。ご自身のワクチン接種歴が分からず不安な方も、お気軽にご相談ください。