- 6月 26, 2026
おならが止まらないのはなぜ?過敏性腸症候群(IBS)ガス型の原因と低FODMAP食事療法・治療薬を消化器病専門医が解説

こんにちは。
神戸市西区のさいとう内科クリニック院長の斉藤雅也です。
「大事な会議中や満員電車の中でおならが出そうになって不安」
「お腹が24時間ガスでパンパンに張って苦しい」
このような、他人に相談しにくいデリケートなお腹の悩みを抱えている方は、実は決して少なくありません。
病院の検査で「特に炎症や異常はありません」と言われてしまい、どう対処していいか分からず一人で抱え込んでしまうケースも非常に多いのが実情です。
器質的な異常(目に見える病気)がないにもかかわらず、慢性的なお腹の張り、ゴロゴロという腹鳴、頻繁なおならに悩まされる場合、それは「過敏性腸症候群(IBS)」の中でも、特にQOL(生活の質)を低下させやすい「ガス型」と呼ばれる状態かもしれません。
今回は、ガス型IBSの本態、腸と脳の関わりから生じる原因、科学的エビデンスのある食事療法「低FODMAP食」、そして消化器内科で行う治療薬について詳しく解説します。
■1.過敏性腸症候群(IBS)ガス型とは?

過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)とは、大腸カメラ(内視鏡)などの検査を行っても、腸の粘膜に潰瘍や炎症、がんといった「目に見える器質的な病変」がないにもかかわらず、腹痛や腹部不快感、便通の異常が慢性的に繰り返される機能性消化管疾患です。
現代のストレス社会を背景に患者数は増加傾向にあり、全人口の約10%〜15%(およそ10人に1〜2人)が悩まされている非常に一般的な病気です。特に20代〜40代の働き盛り・学校生活の真っ最中である若い世代に多く見られます。
IBSは、国際的な診断基準において便の状態に基づき以下の4つのサブタイプに分類されます。
① 下痢型(IBS-D): 突然の激しい腹痛とともに水様便や軟便を伴う。男性に多い傾向。
② 便秘型(IBS-C): 腸の痙攣によって便が通りにくくなり、硬いコロコロ便になる。女性に多い傾向。
③ 混合型(IBS-M): 数日おきに下痢と便秘の症状を交互に繰り返す。
④ 分類不能型(IBS-U): 上記のいずれの定義にも明確に当てはまらないもの。
今回のテーマである「ガス型IBS」は、この公式分類上の枠組みを超え、特に「腹部膨満感(お腹の張り)」「頻繁なおならやゲップ」「腸内ガスの滞留」が主症状として前面に出るケースを指します。
国際的な診断基準(ローマIV基準)
医学的にIBSを疑うひとつの目安として、以下の基準(ローマIV基準)が用いられます。
【ローマIV診断基準】
最近3ヶ月間のうち、少なくとも週1日以上、繰り返し起こる腹痛があり、以下のいずれか2つ以上を満たす場合。
- 排便に関連して腹痛が変化(排便後に痛みが和らぐなど)する
- 排便の回数の変化(増える、または減る)に関連している
- 便の形状(外観)の変化(下痢便、またはコロコロ便)に関連している
※これらの症状が、診断の少なくとも6ヶ月以上前から現れており、直近3ヶ月間持続していることが条件となります。
■2.なぜお腹にガスが溜まる?解明された4つの原因メカニズム

最新の消化器病学の研究において、ガス型IBSが発生する背景には、単なる「ガスの量」の問題だけではなく、神経や腸内細菌、脳が複雑に絡み合った生化学的メカニズムが関係していることが分かっています。
① 腸管過敏性(脳の誤認識)
多くの研究データによると、IBSガス型の患者様は、実際に腸内で発生しているガスの総量が他の方より極端に多いわけではないケースが多々あります。
最大の本態は、腸の神経が異常に敏感になっている「腸管過敏性」にあります。健康な人であれば何とも感じない通常の量(わずかな量)のガスや便であっても、敏感になった腸の神経が激しい伸縮ストレスとして感知し、脳に対して「今、大量のガスが溜まって破裂しそうだ」という強い張りや腹痛、不快感のシグナルを過剰に送ってしまうのです。
② 腸脳相関(脳腸軸)のバグ
腸と脳は「第二の脳」と呼ばれるほど、ミラクルな双方向の神経ネットワーク(脳腸軸)で密接に結びついています。真面目で几帳面、他人の評価を気にする責任感の強い性格の方ほど、過度な精神的ストレスやプレッシャーに晒された際、脳からのストレス信号が神経を通じてダイレクトに腸へと伝わります。
これにより腸のセロトニン分泌のバランスが乱れ、腸の蠕動運動が異常に激しくなったり、逆に一部の動きがピタッと止まってその場所にガスが激しく滞留(渋滞)したりします。さらに「また人前でおならが出たらどうしよう」という強い予期不安や緊張が、脳を介してさらにお腹の症状を悪化させるという強固な悪循環(スパイラル)を引き起こします。
③ 呑気症(空気嚥下症)
腸に溜まるガスの約7割は、実は口から無意識に吸い込んだ「空気」です。人は緊張や強いストレスを感じると、無意識のうちに唾液を飲み込む回数が増え、その際に大量の空気を一緒に胃へと流し込んでしまいます(呑気症)。
また、早食い、麺類や汁物を音を立ててすする習慣、炭酸飲料の常用、ガムを日常的に噛む行為、ストローでの飲用なども、空気を胃腸へ過剰に送り込む引き金になります。
④ ディスバイオシス(腸内細菌の乱れ)とSIBOの関与
IBSの患者様は、腸内微生物叢(マイクロバイオータ)のバランスが崩れる「ディスバイオシス」の状態にあり、悪玉菌が優位になってガスを大量に産生しやすい腸内環境になっていることが確認されています。
さらに近年注目されているのが、本来は細菌が少ないはずの小腸の中で細菌が爆発的に増殖してしまう「SIBO(小腸内細菌異常増殖症)」の合併です。小腸に増えすぎた細菌が、入ってきた炭水化物を異常発酵させることで、水素ガスやメタンガスを大量に発生させ、これが頑固なお腹の張りやゲップを急増させる原因となっていることが指摘されています。
■3.最も効果的な食事療法「低FODMAP(フォドマップ)食」

ガス型IBSの食事アプローチとして、現在最も高い科学的エビデンス(臨床的有効性)が確立されているのが、オーストラリアのモナッシュ大学で開発された「低FODMAP(フォドマップ)食」です。
FODMAPとは、小腸で吸収されにくく、大腸に届いた際に腸内細菌によって極めて激しく発酵・糖質分解され、大量のガス(気体)を生み出しやすい「短鎖炭水化物(特定の糖質)」の頭文字をとったものです。
- F:Fermentable(発酵性の糖質)
- O:Oligosaccharides(オリゴ糖): 小麦、パスタ、パン、玉ねぎ、にんにく、大豆・豆類など
- D:Disaccharides(二糖類): 牛乳、ヨーグルト、アイスクリームなどの乳製品に含まれる「乳糖(ラクトース)」
- M:Monosaccharides(単糖類): りんご、梨、桃、はちみつなどに多く含まれる「果糖(フルクトース)」
- P:Polyols(ポリオール/糖アルコール): 人工甘味料(ソルビトール、キシリトール)、きのこ類、カリフラワーなど
高FODMAP食品を多く摂取すると、お腹の中でガスが大量発生するだけでなく、大腸の水分を引き込んで下痢を引き起こしたり、お腹を内側から圧迫して強い張りを引き起こしたりします。
低FODMAP食を実践するには

- 制限期(2〜6週間): まずは日常生活から高FODMAP食品を徹底的に排除し、お腹のガスや張りが改善するかどうかを検証します(IBS患者の約75%に明確な改善が見られるというデータがあります)。
- 再導入期: 症状が落ち着いた後、制限していたグループの食品を1種類ずつ少しずつ食べていき、「自分の腸にとって、どの食品がガスの真の引き金(トリガー)になっているか」を特定します。
※何が体に合うかは一人ひとりの腸内細菌叢の構成によって完全に異なるため、食事日記をつけながら、自分に合った「お腹が張らない食事プラン」を見つけていく試行錯誤が大切です。脂肪分の多い揚げ物、カフェイン、アルコール、刺激の強い香辛料(唐辛子など)も腸の蠕動運動を過剰に刺激するため、症状がある時期は控えるべきです。
■4. 消化器病専門医が行う安心の薬物療法

セルフケアや食事の見直しだけではコントロールが難しい場合、医療機関で症状や便通のタイプに合わせた適切な内服薬を処方してもらうことで、日常の苦痛を劇的に和らげることが可能です。
- 消泡剤(ジメチコンなど): 腸の中に発生した細かくて頑固なガスの気泡の表面張力を失わせ、気泡を合体させて大きなガスにすることで、体外への排出(吸収・おなら・ゲップ)をスムーズにし、膨満感を即効性をもって緩和するお薬です。
- 高分子重合体(ポリカルボフィルカルシウム): 腸の中で水分を吸収して便の硬さを適正に調整するお薬で、下痢型・便秘型どちらのIBSの便通異常にも非常に有効です。
- 消化管機能調整薬・鎮痙薬(抗コリン薬): 腸の過剰な自律神経の乱れや痙攣(けいれん)を優しく抑え、お腹のゴロゴロする音や差し込むような腹痛を緩和します。
- プロバイオティクス(医療用整腸剤): 酪酸菌、ビフィズス菌、乳酸菌などの有益な善玉菌を補給し、ディスバイオシス(細菌叢の乱れ)を起こした腸内環境のバランスを根本から整えていきます。
- セロトニン受容体拮抗薬: 主に下痢型のIBSに対し、腸での過剰なセロトニンの働きをブロックして激しい蠕動運動と腹痛を抑えます。
- 自律神経調整薬:交感神経と副交感神経のバランスが不安定になっていることがIBS発症の原因になっていることが多いため、日中の緊張、休日や夜間のリラックスといった、精神面での変動が大きいケースにおいては、自律神経調整薬を併用することで、気分が優れ、IBS症状が軽快することがあります。
- 精神神経用薬(少量): 腸脳相関のバグを根本から遮断するため、不安や緊張、予期不安が非常に強いケースにおいては、少量の抗不安薬や抗うつ薬を併用することで、驚くほど症状が軽快することがあります。
■5.受診のタイミングと大腸カメラ(内視鏡)の重要性

お腹の張りやガスの症状が数週間以上長引いている場合、それが単なるIBS(機能性の病気)であると自己判断して放置するのは危険です。なぜなら、IBSの正確な診断は、「腸の中にがんや炎症、潰瘍などの、目に見える恐ろしい器質的疾患が絶対に隠れていないこと」を証明して、初めて確定するものだからです。
特に、以下のような「アラームサイン(危険信号)」が一つでもある場合は、一刻も早い消化器内科への受診が必要です。
- 血便(便に血や粘液が混じる)
- 急激な体重減少(ダイエットしていないのに体重が落ちる)
- 発熱や、夜間にお腹が痛くて目が覚める症状
- 50歳以上で初めてお腹の異常が始まった場合
- 血縁の家族に大腸がんや炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)の患者がいる
大腸カメラ(内視鏡検査)に不安がある方へ
「大腸がんやポリープが隠れていないか調べるために大腸カメラが必要と言われたけれど、痛そうで怖い」と検査をためらってしまうお気持ちはよく分かります。また、女性は、恥ずかしいといった理由で、ためらってしまう方が多くみられます。
当院(さいとう内科クリニック)では上部内視鏡(胃カメラ)を行っておりますが、大腸カメラに関しては、分院である「たなか内科クリニック(JR大久保駅北口すぐ)」と緊密に連携しております。 たなか内科クリニックでは、適切な鎮静剤(静脈麻酔)を使用し、ウトウトと心地よく眠っている間にすべての観察が完了する「苦痛に最大限配慮した大腸カメラ検査」を安心して受けていただくことが可能です。プライバシーにも最大限配慮していますので、女性の方も安心です。
まずは、当院で血液検査、腹部エコー検査(超音波専門医である院長が施行)など、お体に負担の少ないステップから状況を確認し、必要に応じて分院でのスムーズな大腸カメラ検査の手配・連携を行います。どうぞ怖がらずに、安心してお腹の状態を一度お聞かせください。
■一人で悩まずに、快適な毎日を取り戻しましょう

ガス型IBSによるおならの悩みは、単なる「体質」や「気の持ちよう」などではなく、腸管の過敏性や腸脳相関の乱れ、食事のミスマッチが引き起こしている、医学的に適切な治療が必要な病気です。
「たかがおならの回数くらいで病院に行くなんて恥ずかしい…」と我慢し続ける必要は一切ありません。においや音が気になり、人前で常に張り詰めた緊張感を抱えていること自体が最大のストレスとなり、それがさらにお腹のガスを悪化させるという悪循環を生んでしまいます。
ひとりで抱え込まず、まずは一度さいとう内科クリニックへお気軽にご相談ください。 当院では、患者様の大切なプライバシーに最大限配慮した環境で、お一人おひとりの具体的な症状や生活背景にしっかりと耳を傾けています。当法人グループの強みを活かし、必要に応じた苦痛の少ない大腸カメラ検査(分院連携)で隠れた大きな病気を確実に除外した上で、最適なオーダーメイドの治療薬や、低FODMAP食事指導を通じて、あなたがお腹の不安を忘れて心から笑顔で毎日を過ごせるよう、全力でサポートいたします。快適なお腹と安心の日常を、一緒に取り戻していきましょう。
- 院長
- 斉藤 雅也
- 診療内容
- 内科・消化器科
- 住所
- 〒651-2412
兵庫県神戸市西区竜が岡1-15-3(駐車場18台あり)
(旧:森岡内科医院) - 電話
- 078-967-0019
- 携帯
- 080-7097-5109
- 電車
- JR山陽本線「魚住駅」から車で約9分
JR山陽本線「大久保駅」から神姫バス天郷停留所(約11分)下車、徒歩5分 - 車
- 第二神明道路大久保インターから約1分
- 駐車場
- 駐車場18台完備!
- アクセス
- 当院は神戸市西区と明石市の境界付近に位置しており、明石市からも徒歩圏内です。実際に、明石市方面からも多くの患者様(肝臓病・一般内科)にご来院いただいております。駐車場も完備しておりますので、お車での通院も便利です。風邪や生活習慣病など、かかりつけ医としてお気軽にご利用ください。
